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2024年のジャズジャイアント。ジョン・バティステ

2024年のジャズを語る上で知っておきたい存在、ジョン・バティステ。ジャズをジャンルから解き放つレジェンドの魅力に迫る。

本記事も掲載されている、BRUTUS「JAZZ is POP!!」は、2月15日発売です。

text: Mitsutaka Nagira(Jazz The New Chapter)

ジャズをジャンルから解き放つレジェンド

©Getty Images

2023年10月、ジョン・バティステの初来日公演があった。その日、最も印象的だったのは彼の演奏や歌だけでなく、ステージを降りてメロディカやタンバリンを手に客席を歩きながら、観客たちとともに歌い、踊り、音楽を通じてコミュニケーションを行っていたことだった。

彼は自身の音楽をジャズやソウルやヒップホップといったジャンル名ではなく、“ソーシャル・ミュージック”と呼ぶ。それはもともと音楽が持っていたはずの役割を蘇らせるように音楽を使っていることに由来する。

エンターテインメントとして、もしくはビジネスのために使われる前の音楽はコミュニティのために奏でられていた。そこでの音楽は儀式などの場でそのコミュニティの人たちをつなぐもの。

彼はそんな音楽の原初的な側面を意識しながら、この社会にいる様々な人を結びつけるために音楽を奏でている。2020年6月にはNYで『We Are: A Peaceful Protest March With Music』というデモ行進を行い、ミュージシャンによるブラック・ライヴス・マターへのアクションとして注目を集めた。

人種差別の被害者を音楽とともに悼むような行進は彼の故郷ルイジアナの伝統行事ジャズ・フューネラルの現代版のようだった。

彼はこういったストリートでの演奏を“ラヴ・ライオット”と呼び、公共空間で演奏をすることそのものにも社会的な意味を付与している。ジョン・バティステは現代における音楽との関わり方や捉え方をも提示しているのだ。

バティステを知るための3枚、3曲

1.「We Are」/『We Are』より/Jon Batiste
2.「Wherever You Are」/『World Music Radio』より/Jon Batiste
3.「Kenner Boogie」/『Hollywood Africans』より/Jon Batiste