国内でのパーティが再開し、全国各地へDJに出かけているというMidoriさん。地方のレコード店へ再訪し、気づいたことがあるという。
「やっぱり地方都市の方が、クラブなどライブシーンとレコード屋の距離が密接だと改めて思いました。データでプレーするDJが多い一方で、アナログを買っている人も多い。僕自身、クラブが盛り上がるほど、レコードが売れるということを体現している自負があります。なぜなら各地方でDJプレーした翌日、必ずと言っていいほど、お店へ行って大量にレコードを買ってますからね。
最近は、若い人たちがオーガナイズするパーティも増えています。データ音源で育ったDJたちにもかかわらず、アナログの音の良さがわかっているんです。レコードに収音できる音域は、デジタル音源に比べ、高底域を含めて広いため、レコーディング現場の臨場感も体感することができます。
特にジャズはライブ録音が多く、例えばドラマーがソロを叩きながら唸る声まで収録されていて。そういうニッチなところほど、チェックして聴き比べているような若い人が多い(笑)。そんな新世代のDJたちの活躍に伴い、各地に新しい店が増えたように思います」
一時停滞していた関西シーンにもさまざまな動きがあった様子。
Hachi Record Shop and Bar
「京都のクラブシーンやレコード屋さんが面白い。まずは〈Hachi Record Shop and Bar〉。1階がDJブースを併設したクラフトビールが楽しめるバー、2階がレコードショップになっています。ジャズやブラジルなどのワールドから、LAのジャズシーンとリンクするエレポップまで。ジャンルを横断するセレクトが本当に新鮮。また、2018年に〈JAZZY SPORT KYOTO〉がオープン、新譜や中古を扱っています」
Especial Records
「また、Kyoto Jazz Massiveの沖野好洋さんが運営する〈Especial Records〉の店舗が、大阪にあります。自社レーベルからリリースした作品、さらにUKのフューチャー、クラブジャズの新譜などをセレクト。関西のシーンを支えている存在です」
everyday records
地方の中でも、独自の動きがあるという金沢に注目しているという。
「昔からクラブジャズのパーティが盛んです。現地のDJからおすすめされて行った〈everyday records〉は、中古と新譜を半々くらいで扱っていて、そのセレクションが最高でした。ジャズの定番はもちろん、70年代に発表された日本のジャズの中古やリイシューなどもあって。東京よりも価格がお手頃なのも特徴。
それから、能登半島の最北端である珠洲市に店舗を構えている〈LIBRARY RECORDS〉。いつもオンラインショップをチェックしているんですが、フリージャズ、LAの〈Stones Throw〉みたいなジャジーヒップホップといった幅広いセレクションです」
さらに福岡にも、新しいシーンが出来上がりつつあるとか。
LIVING STEREO MUSIC BAR & RECORD STORE
「〈LIVING STEREO MUSIC BAR & RECORD STORE〉は、その名の通りミュージックバーとレコードショップが合体したお店。広々としたバースペースには、JBLのスピーカーとマッキントッシュのアンプがあって、心地よくビル・エヴァンスのレコードがかかっていたり。また、ショップではロイ・エアーズなどのメロウなジャズファンクのレコードも多く、掘り甲斐がありました。
それから、ひょうたんを使ったスピーカーで知られる糸島の〈kalavinka〉。レコードショップとしても知られていて、世界中で買い付けたマニアックなレコードを扱っていて、今度ゆっくり行きたいと思います」
地方都市のレコード店で、見たこともないようなレア盤と出会うことがあるそう。地方のショップも独自の個性を磨いている。
「東京のジャズが強いレコード店は、ある程度決まった新作の卸業者や、有名な中古バイヤーから商品を取っています。しかし、地方の場合、独自に個人バイヤーから買い付けてくる場合が多いんだと思います。
別府の中古屋さんで、激レアなエチオピアのジャズのレコードが売られていて、衝撃を受けました。かなりの高額盤でしたが、東京で調べたところ、もっと高値がついていて(笑)。これからレコードを聴き始める方は、まず地元の中古盤屋さんもチェックすることをおすすめします」