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真鍋大度×小橋賢児。2人のクリエイターが見つめる未来とは

J-WAVEで毎週日曜日23:00から放送中の『TOPPAN INNOVATION WORLD ERA』は、真鍋大度、後藤正文、のん、小橋賢児という4人のクリエイターが毎月週替わりでナビゲートする番組。これまで交わることがなかった彼らが2組に分かれて互いに行ったインタビューには、いくつもの「あしたの種」が詰まっていた。後藤正文×のんの対談も読む。

Photo: Shinya Sato / Text: Hiroya Ishikawa / Edit: Emi Fukushima

「エンターテインメント」のあした。

(真鍋大度から小橋賢児へ)
かつては俳優として、現在は大規模なイベントや、新たなスタイルのバーなどを手がけるクリエイティブディレクターとして。エンターテインメントの分野を渡り歩く小橋賢児に、真鍋大度がエンタメの行方について投げかけた。

真鍋大度

小橋さんとは一昨年にイベント会場で一度ご挨拶させていただいて以来ですよね。改めてよろしくお願いします。

小橋賢児

よろしくお願いします。

真鍋

ではさっそくですが、ラジオをはじめ、音声で届けられるコンテンツが増えた今、Clubhouseという音声SNSも出てきて、急に音声メディアが盛り上がっている気がします。耳から得る刺激ってどういうふうに考えていらっしゃいますか?

小橋

これまで映像の時代って言われていて、それももちろんまだまだあると思うんですけど、映像ってある意味で作り込んであるものが多いので、受け身になって作り手の意図をそのまま入れちゃう部分が大きいですよね。

でも耳で聴く場合は、自分のイマジネーションが働くので、創造性には耳からの刺激がすごくいいなと思っていて。あと、多くの人にとっては、移動しながらとか、なにかをやりながらでも聴けるっていうのはいいですよね。

真鍋

音声メディアが溢れてきましたが、結局一度に2つのコンテンツを聴くのは難しいじゃないですか。この先どういうふうになっていくと思われます?

小橋

Clubhouseが登場して、誰もが会話に入れる時代になったなと思いました。ただ、それによってラジオがなくなるとは思わなくて、Clubhouseのラフさの良さと、ラジオの作り込まれた良さの両方があるんじゃないかと。

逆に言うと、ラジオも新しい作り方を頑張っていくと思うし。Clubhouseは、テクノロジーが進んでいるこの時代において、めちゃくちゃアロナグ的なところが面白いですよね。

真鍋

今、小橋さんはクリエイティブディレクターとして、音楽フェスの『ウルトラ・ジャパン』や未来型花火エンターテインメントの『スターアイランド』など巨大イベントをプロデュースされていると思うんですけど、エンタメを作り出す仕事の醍醐味ってなんですか?

小橋

実は僕は巨大なものを作りたいと思ったことは一回もないんです。僕が人生の道中でさまよっていた時に、日常から非日常であるイベントの場に行ったら、自分の内側からポッと出てくる忘れていた感情や、閉ざしていた気持ちに気づくことができた。本当の自分につながっていくきっかけが作れたんです。

その気づきのきっかけを自分でも作りたいという気持ちが僕のど真ん中にあって。それを自分のできる範疇でやっていたら、今のような状況になったって感じなんですよね。

みんな、心の部分は忙しくて見られてない。

真鍋

なるほど。活動の領域はイベントだけじゃないですよね。最近だとノンアルコールバー〈0%〉やリトリートラウンジ〈UNBORN〉を手がけられていますが、始めようと思ったきっかけは?

小橋

いろいろやりながら、やっぱり物質的なものって頑張ったらみんな手に入れられるんですけど、心の部分は忙しくて見られてないなと感じていたんです。

そんな中でコロナ禍になって、イベントも全部つぶれていった時に、いよいよちゃんと自分の内側を向く時間って大事だってことを伝えていきたいなと思って始めました。

ノンアルコールバーの〈0%〉って、アルコールゼロっていう意味もあるんですけど、心をゼロとか、元気って元の気って書くので、元気にする、つまりはゼロに戻していくっていうプロジェクトを、カジュアルな入口から始められたらなと思ってやっています。

真鍋

最後に今、小橋さんが見ている次のアクションを教えてください。

小橋

やっぱり人々を元の気に戻していくことですね。そうなれば、みんなが本来持つ創造性を取り戻せるので。そのためのゼロプロジェクト、心のエンターテインメントをやっていきたいなって思っています。

「最先端」のあした。

(小橋賢児から真鍋大度へ)
テクノロジーを駆使した公私にわたる活動で注目を浴びるメディアアーティストの真鍋大度。変化の激しい時代に、なぜ最先端に居続けられるのか?コロナ禍の先に見据える未来とは?真鍋の思考に小橋賢児が迫った。

小橋

真鍋さんって、ご自分のことをどんな方だと思われていますか?

真鍋

半分は職人で、半分はアーティストって感じですかね。職人芸としてはプログラムを書いたりすることで、発想はアーティストとしてやっています。

小橋

いまだにご自身でもプログラムを書かれたりしているんですか?

真鍋

はい。やっぱりその部分が楽しくて、技術を身につけることが自分のモチベーションになっているところもありますから。

小橋

真鍋さんといえば、一つの大きな転機が2006年、ライゾマティクスの設立だと思いますが、これは齋藤精一さんと出会ったことがきっかけなんですか?

真鍋

そうですね。2人とも作品制作をしていたいけど、それだけでは食べられないから、なにかしら制作のコミッションワーク、クライアントがいる仕事をやらなきゃいけないよねということで。

個人でやるよりもチームでやった方がいいので、ライゾマを作りました。当時は社員を含めて4人でやっていて、現在のように大きな会社にするつもりはまったくなかったです。

小橋

自分では想像のつかなかった未来が起きているってことですね。

真鍋

10年後のことはなかなかわからないと身をもって体験しました。

小橋

真鍋さんの作品って、パフュームとかも含めて大きなエンターテインメントをやっているのに、時代や消費者に媚びてないなと思うんです。自分が信じたものをやっていたら世間が勝手に拾ってくれるような。

真鍋

ありがたいお言葉ですね。自分が興味のあることを追求していく姿を、みなさんに見ていただくというスタンスでいたいなとは思います。

小橋

なるほど。いつも最先端を作っているように見えますが、狙っているっていうよりは、自分が作ったものが気づいたらあとから最先端って言われちゃう感覚なんですか?

真鍋

人の評価は様々ですが、あまり気にしていないですね。YouTubeにいろんな動画をアップしていて、全然観られないものもたくさんあるので。
失敗することや話題にならないことは、自分の活動に関してはあまり恐れていないんです。

小橋

そんな中から最先端になっていくようなものをアウトプットしていくうえで、インプットとしては普段何をされているのか気になります。

真鍋

最近はインタビューですね。自分でこれ以上調べるのは難しいなと思ったら、専門家にお話を伺ったりしています。あとは研究者とのコラボレーションを通じていろいろ学んでいくパターンもありますね。

小橋

真鍋さんも日々学んで、常に刺激を受けて、自分自身をアップデートされているってことですね。そんな中、このコロナ禍で、ライブをはじめとするエンタメが中止や延期になっている現状を受けて、今後どんなことを考えられていますか?

真鍋

やはりリアルスペースに戻ったとしても、マスクは着けているでしょうし、大声も出せない現場が増えていくと思うので、そうなった時でも新しい楽しみを見つけられるように、ハードウェアもソフトウェアも開発していますね。

ライゾマはもともとリアルスペースでのエンタメの現場が多かったのですが、それをバーチャル、オンラインにシフトせざるを得なかったこともあり、今まで作ってこなかったような自宅で楽しむためのデバイスを開発したり、現状のZoomのコミュニケーションに対して、その拡張機能みたいなものや、雑談のプラットフォームみたいなものを作ったり。

実験的なものばかりですけど、その中からもしかしたらみなさんに使っていただけるものが出てくるかもしれないなと思って、いろいろやっています。

小橋

最後に個人的なホープですけど、僕は心のエンタメみたいなものを作りたいと思っているので、例えば、瞑想に関するプロジェクトなどをいつかご一緒できたらいいなと勝手に思っています。

真鍋

やはり脳の中でなにが起きているのかとか、心に興味があるので、ぜひご一緒できる機会がありましたらよろしくお願いします。

真鍋大度×小橋賢児