松居大悟監督によるオリジナルラブストーリー『ちょっと思い出しただけ』。伊藤沙莉さん演じるタクシードライバーの葉と、池松壮亮さん演じる、ケガでダンサーの夢を諦めた照明スタッフの照生。
2021年の7月26日から始まるこの物語は、同じ日を1年ずつ遡り、別れてしまった男女の“終わりから始まり”の6年間を描く。愛し合った日、冗談を言い戯れ合った日、喧嘩した日、特別な日、なんでもない日、出会った日……。それは、誰もが“ちょっと思い出す”ような、愛しい、だけど二度と戻れない日々。
「自分も知ってる感覚だったり、この場面、私もあったかも、みたいなことが詰まっていて、特に大きなドラマが起こるわけじゃないけれど、ある意味すごくドラマティック。何も起きてないようで、実はとってもいろんなことが起きてるということを物語の中に感じることができる。
このちょっと矛盾しているような感覚が、観る人みんなに寄り添ってくれると思います。去年まですごく楽しめていたことが、今だとそこまでノレないな、とか。ちょっと前まで朝まで飲めてたのに急にパタッと眠ってしまう、とか。ちょっとした感覚の変わりようで、時間軸って構成できるんだなって」
撮影は2021年の7月から8月にかけて行われたそう。冒頭のシーンでは今の東京を生きる葉と照生の姿が生々しく描かれている。
「こんなにも毎日マスクをつける日が来るなんて思っていなかったし、そういう慣れ辛い変化もあったけれど、私自身はコロナの直前にやっと実家を出たりとか……。あ、そういう意味では葉ちゃんと重なるような感覚もあったかも」
変わるもの、変わらないもの。
9歳から役者を始め数え切れないほどの作品に出演し、近年は助演から主演へと、着実にキャリアを重ねている。この6年間、伊藤さんにとってはどんなものだったのだろう?
「声優をやらせていただいたり、歌を歌わせていただいたり、新しいことにチャレンジできてすごく彩りが増した贅沢な日々だと思います。感覚や経験したことによって、物事を考える余裕や余白ができて、成長もしてきた。
でも、その間も役者としてやっていることは変わらないし、根本の自分の在り方みたいなものはそこまで変わっていないと思う。役者としての展望?あまり行き先は決めてないですね。少しカッコつけるなら、当てなきドライブを楽しんでいる、そんな感じかな」