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『夏のホラー秘宝まつり2022』残虐で美しい、イタリアンホラーの傑作を

ホラー映画はエグければエグいほど面白く美しい。とりわけ残虐度では狂おしい情熱を発揮してくれる、イタリアンホラーの伝説的な鬼才たちと一緒に過ごす夏──個人的には最高だ!と爽やかな笑顔で断言したい。

text: Naoto Mori

映画評論家・森直人が注目する
夏の風物詩的特集上映

そんなわけで本稿のレコメンドは『夏のホラー秘宝まつり2022』である。センス抜群の変態的なセレクトが好評を博し、新しい夏の風物詩として続く特集映画祭も第9回。今回は初の渋谷開催も決定し、この窮屈なご時世に異例の拡大を続けるゴージャスなまつりなのだ。

上映作は全20作。その中でも白眉は、みんな大好きルチオ・フルチ監督のレアな1980年のギャング映画『野獣死すべし』スクリーン日本初上映だろう。2021年は没後25周年、マニアの高揚感が爆上がりしたタイミングでの登場。地元愛あふれるイタリアのお家芸ジャンルをフルチ先生が手がけるとどうなるか?

『野獣死すべし』
舞台は密輸組織が暗躍するナポリの港町。麻薬組織に因縁を持つ密輸業者の男が復讐のため立ち向かう。
監督:ルチオ・フルチ/出演:ファビオ・テスティ、マルセル・ボズフィほか。

ナポリの港町を舞台に血まみれ抗争劇が過激にエスカレート。『ゴッドファーザー』や『バラキ』ばりの風格を本格的に備えつつ、フリーキーな人体破壊が彩る作風はお洒落としか言いようがない。

そして本映画祭のアイコン的巨匠、マリオ・バーヴァ監督の人気作も6本上映。ゴシックホラーの金字塔『血ぬられた墓標』(60年)をはじめ、名匠ロッセリーニ監督の撮影も手がけていたバーヴァの映像美は必見だ。ほかにもイタリア=スペイン合作による初期ゾンビ映画の重要作『悪魔の墓場』(74年)など色々なお宝ぎっしり!

『血ぬられた墓標』
『血ぬられた墓標』
17世紀、某国の王女アーサは、魔女裁判によって処刑される。それから200年の時を経て、彼女は蘇るのだった──。
監督:マリオ・バーヴァ/出演:バーバラ・スティールほか。

『夏のホラー秘宝まつり2022』

ルチオ・フルチ監督やマリオ・バーヴァ監督の名作のほか、『バスケットケース』や『悪魔の墓場』などイタリアンホラーの傑作20本が公開。8月12日、キネカ大森ほかで全国開催。