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石橋静河、小津映画『お茶漬の味』の舞台へ。伊豆最古の湯処、修善寺温泉

2023年に生誕120年を迎えた映画監督・小津安二郎。その作品『お茶漬の味』冒頭で登場するのが、伊豆最古の湯処、修善寺温泉。俳優・石橋静河さんを誘い、美しい古民家料理店と、歴史の宿を訪ねる。

photo: Katsumi Omori / styling: Naomi Shimizu / yukata dressing: Naomi Hashimoto / hair & make: Hiromi Chinone / text: BRUTUS

修善寺温泉でお茶漬けを味わい、小津作品の世界へ

「小津監督がここにいて映画を撮ったと思うと、とても感慨深いです」

小津安二郎作品のリメイクに参加し、時代が変わっても揺るがない芯の強さ、丁寧な生活の描き方に日本的な感覚の美しさを感じたという石橋静河さん。小津監督作『お茶漬の味』に登場した宿が当時のままだと聞き、修善寺温泉へと連れ立った。

ただし足を延ばしておいしい店にも立ち寄りたい。まずは、修善寺駅から車で20分ほどの古民家料理店、〈羅漢〉へ。地元でとれる旬の食材を用い、素朴ながら美しい料理の数々を。〆には炭火でじっくりと焼いたおにぎりをだし茶漬けにし、地産のワサビを擦り入れる。「人生で一番おいしい焼きおにぎりです」

静岡・修善寺〈羅漢〉焼きおに茶漬け
だしをかけて焼きおに茶漬けに。

昼餉(ひるげ)を終え、件(くだん)の宿〈新井旅館〉に着くと、早速温泉へ。天平大浴堂など、館内の建築に色褪(あ)せない美を感じると話しながら、くつろぐ石橋さんが漏らしたのが、冒頭の言葉。

その後、浴衣に着替えて街へ。名産のどんこ専門店に掲げられたシイタケの写真を見て「売り物のシイタケを神聖なものとして扱うような姿勢に、心が洗われます」。

修善寺のおいしい温泉旅には、身も心も清める、思わぬ効能があった。