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投資ってなんだか怖いし、難しそう?〈鎌倉投信〉創業者の新井和宏さんが基本の「き」をレクチャー

将来のための準備をはじめる。長期的な目線を持って何かをはじめるのも有意義なこと。世界を広げてくれる語学から、お金にまつわるあれこれ、働き方・暮らし方まで。理想の人生を送るために必要なスキルや知識を、今日から少しずつ身につけよう。

text: Yuriko Kobayashi

教えてくれた人:新井和宏(〈eumo〉代表)

共感できる会社を見つける。

最近、「投資をはじめた方がいいよ」という声をよく聞くけど、「なんだか怖いし、難しそう」という人は多いはず。
そんな率直&ふんわりした悩みに、基本の「き」からやさしくレクチャーしてくれたのは〈鎌倉投信〉創業者の新井和宏さん。

「利益を上げながら社会に貢献する“いい会社”だけにしか投資しない」をコンセプトにした運用を行い、損得に終始しがちな投資界に「やさしい投資」という概念を提唱した人だ。

「慎重に考えるのは大切なことです。まずはなぜ今、投資をしたらいいという声が高まっているのかを考えてみましょう。シンプルに言うと、バブル時代とは違って、今の銀行の金利では一生かかっても資産が倍になるなんてことはないわけです。だから多少のリスクをとっても投資をした方がいいのでは?ということなんですね」

たしかに、それは納得だ。

「とはいえ初心者がいきなり個別株を売買するのはハードルが高い。それでよく勧められるのが投資信託。銀行や証券会社などにお金を預けて、プロのファンドマネージャーに運用してもらうという投資の方法です。

ここで誤解してはいけないのが、ファンドマネージャーは“利益を出すプロ”ではないということ。彼らはあくまでも過去のデータからリスクを読み解く“リスク管理のプロ”。
将来の株価がどうなるかなんてわからないし、利益を保証することもできません。ここまでを前提として理解してから、投資をはじめるかどうか判断しましょう」

step1:
投資で何を学べるか?
それを考えてみる。

投資にリスクはつきもの。だとしたら、なおさら怖い……。

「そこで考えてほしいのが、“何のために投資をするのか?”ということです。リスクが怖いと思うのは、“儲けたい”という気持ちが一番だからでしょう。投資は資産を増やすための手段の一つですが、私は投資で得られる一番の収穫は“儲け”よりも“学び”にあると考えています。

例えば投資信託をはじめるにあたっては、何かしらのファンド=金融商品を選ばなくてはなりません。それぞれのファンドにはコンセプトがあって、世界中の会社に投資をするものもあれば、私が創業した鎌倉投信で運用していた“本当にいいと思う会社”だけに投資するファンド、環境問題に取り組む会社だけに投資するファンドもあります。

様々なファンドを見ることで、こんな会社があるんだと発見がありますし、実際に投資すると、株価の変動によって世の中の動きがわかる。投資は自分も社会の一員であるということを実感し、多くの学びを得られる機会なのです」

「投資はカルチャースクールみたいなもの」と新井さん。

「投資においてはリスクや運用手数料が必ず発生します。儲け第一主義だとそれを損と捉えてしまいますが、社会勉強料だと思えば、そこまで嫌な感じはしないはずです」

数あるファンドの中からコンセプトに共感できるものを選ぶのは何だか楽しそう。さらに社会情勢にも詳しくなれるのなら、たしかに多少お金を払っても、やってみる価値はある。

step2:
最初は小さく、
タイミングを分けて。

「実際に投資信託をはじめる時に注意してほしいのが、投資する金額とタイミングです。株価の動きはプロでも予測できないものですから、一気に大金を注ぎ込むのはご法度。余剰資産の10分の1程度の金額ではじめるのが安心です。余裕のない中で投資をすると、短期的な株の変動に焦ってしまって、冷静な判断ができません。

加えて、複数のファンドに何回かのタイミングで投資するとリスク分散ができます。
一つのファンドが下がっても、他方のファンドが上がっていれば精神的に安定しますからね。せっかく積み立てた投資資金を焦って解約してしまったら、マネーロスと後悔しか残りませんから、ゆったりと構えることが大切です」

「儲け」への下心が前面に出ると、一気にお金を投じたくなる。欲深い人間の性を知ったうえでの冷静な計画が必要なのだ。

「リスク回避するもう一つの術が、データに基づいたファンド選び。コンセプトに共感することは一つの入口ですが、気になるファンドを見つけたら、そこに毎月継続的に投資家とお金が集まっているかを確認しましょう。そのデータはどのファンドも公開していて、誰でも閲覧できます。

資金の流入量が多ければ、投資先の株価が多少下がっても、運用会社は毎月入ってくる投資家のお金を元手にさらに株を買うことができます。安い時に株を買えるので、次に株が上がった時に利益が出て、投資家へのリターンも大きくなるというわけです」

共感という情熱と、データという冷静。情熱と冷静をバランスよく持つことが、投資における鉄則ということか。

step3:
心から応援できるか、
自分に問うてみる。

「そうやって投資信託を続けていると、万が一、株価が下がった時でも、そこまで焦らない自分に気づくことがあります。それは、運用会社を通して自分が投資している企業に愛着や応援の気持ちを持っているという証拠です。

例えば、鎌倉投信の商品では、株価が下がった時に“じゃあ、もうちょっと買うか!”というお客さんが少なくありませんでした。株が下がり続けている時に買い増しするのは勇気がいるものです。でも“こんな時だからこそ、投資先の企業を応援したい”という気持ちが、買い増しという行為につながっていたのです。

ここからが面白いのですが、本来株というのは、下がった時に買って、上がった時に売って利益を出すものです。
ただ、みんな“これ以上下がり続けたらどうしよう”という恐怖が先に立って、株価の下落中にはなかなか手を出せない。

そんな中、応援したいという純粋な気持ちで買った人は、あとで大きな利益を手にすることがある。私は常々“綺麗事で投資は成功する”と言っていますが、まさにこういうことなんです」

欲深い人が損をして、ピュアな人が得をする。まるでグリム童話のような話だけれど、だとしたら投資って、悪くない。社会勉強はもちろん、自分がどういう人間なのか、人としての資質もわかるかもしれない。