蟻マシーンには楕円形の部屋と通路が張り巡らされ、無数のアリがうごめく。まさにアリの巣の断面図だが、表面はガラス板で密封され逃げ出す心配もなく、24時間アリの営みを観賞できる画期的な飼育キットなのだ。大の虫好きの島田さんがアリに着目するのは、社会性昆虫の営みに魅力を感じるからだそう。
「人間と同じく家族を構成し、協力して生きます。一家は同じ巣で暮らすので、続けて観察すれば、一つのホームドラマが観賞できます」
島田さん自ら捕まえた女王アリを育て、一定規模の家族になれば、マシーンと一緒に販売する。働きアリは数百匹に増え、やがて女王の死とともに最期を迎える。それは長ければ、10年にわたる家族の物語となる。
「餌は外付けの餌場にミールワームを置けば、働きアリが家族の分も運び、子供に口移しで与えます。巣のゴミは、自分たちで外に出しますよ。おまけにトイレ用の部屋まであって、場所ごとに違う営みがあるので、見飽きることはないんです」
ただしアリの忠誠心を利用し、巣に侵入する好蟻性昆虫や、別種の巣を奪うアリもいるという。アリ特有の匂いを偽装し、家族のフリをする。アリは知らずに赤の他人の世話をするが、その献身的な姿勢もまさにアリらしいと島田さんは言う。