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何時間でも眺めていられる、社会性昆虫・アリの巣。〈AntRoom〉島田拓の愛で方

幼少期にアリの巣を見つけ、中を覗きたいと思わなかっただろうか?そんな子供の頃の夢を叶える、蟻マシーンなる商品を販売するのが、「AntRoom」代表の島田拓さんだ。

Photo: Kazufumi Shimoyashiki / Text: Koji Okano

蟻マシーンには楕円形の部屋と通路が張り巡らされ、無数のアリがうごめく。まさにアリの巣の断面図だが、表面はガラス板で密封され逃げ出す心配もなく、24時間アリの営みを観賞できる画期的な飼育キットなのだ。大の虫好きの島田さんがアリに着目するのは、社会性昆虫の営みに魅力を感じるからだそう。

「人間と同じく家族を構成し、協力して生きます。一家は同じ巣で暮らすので、続けて観察すれば、一つのホームドラマが観賞できます」

北米や豪州の乾燥地域に生息ミツツボアリ
ミツツボアリ/北米や豪州の乾燥地域に生息。蜜などを体内に溜め込む際に、腹部が大きく膨らむ。「非常に珍しい種で、当店にも5年前に1度入荷しただけです」

島田さん自ら捕まえた女王アリを育て、一定規模の家族になれば、マシーンと一緒に販売する。働きアリは数百匹に増え、やがて女王の死とともに最期を迎える。それは長ければ、10年にわたる家族の物語となる。

「餌は外付けの餌場にミールワームを置けば、働きアリが家族の分も運び、子供に口移しで与えます。巣のゴミは、自分たちで外に出しますよ。おまけにトイレ用の部屋まであって、場所ごとに違う営みがあるので、見飽きることはないんです」

ただしアリの忠誠心を利用し、巣に侵入する好蟻性昆虫や、別種の巣を奪うアリもいるという。アリ特有の匂いを偽装し、家族のフリをする。アリは知らずに赤の他人の世話をするが、その献身的な姿勢もまさにアリらしいと島田さんは言う。

毒があるために上級者向けの種 パラポネラ
パラポネラ/南米産。体長25〜28㎜の大きな体躯で人気だが、毒があるために上級者向けの種。右の蟻マシーンは国産のクロオオアリ。増殖が緩やかで、飼いやすい。

見た目のかっこよさを取るもよし、
面白い習性を取るもよし。

蟻マシーンで飼える好蟻性昆虫。
シロオビアリヅカコオロギ

シロオビアリヅカコオロ
アリの巣に同居して生きる昆虫の一種、シロオビアリヅカコオロギ。パートナーであるアシナガキアリの匂いを体につけることで、外敵の少ない巣の中に侵入する。アリは視力ではなく、嗅覚で仲間を識別するため、好蟻性昆虫を仲間だと思い込む。写真はアリが口移しで餌を与える瞬間。