「2人が一緒にいるために」。ガーリーな感性とDIY精神を宿すアイドル〈REIRIE〉
photo: Kazufumi Shimoyashiki / text & edit: Tsuyachan
2人が一緒にいるために。2人がやりたいことをするだけで
かつて〈LADY BABY〉のメンバーとしてともに活動していた黒宮れいと金子理江。離れ離れになった5年の月日を経て、運命的な再会を果たし〈REIRIE〉を結成したのが2023年の1月だった。それから約3年、2人が作り出す表現に多くのファンが夢中になり、ついにはメジャーデビューを果たすまでに。〈rurumu:〉をはじめとしたファッションブランドとともに描くビジュアル、親密な関係性。狂おしいまでの多幸感に満ちた、〈REIRIE〉だけのファンタジックな世界観は、他に類を見ないような特別な熱狂を生み出している。
驚くべきは、2人がそもそもアイドルをやっている自覚すらない点。「仕事をやってる感覚もない。ただ私たちが一緒にいられる時間をつくって、れいとりえがやりたいことを最優先にやってるだけ」と口を揃える。
「居場所なんです。そこに音楽やパフォーマンスが乗っかってるだけというか。以前の〈LADY BABY〉では、どちらかというとグループとしてパッケージされた器があった」(りえ)
グループ時代を思い返して、れいは懐かしそうに「若かったですよね」と語る。「昔からりえちゃんは私の意見をすごく汲み取ってくれてたんですよ。でも、私が若さゆえにそれを突っぱねてたんだなって気づいた。りえちゃんは自分よりも他者を優先しがちで、聖母マリアのような人なんです」。照れながら、すぐさまりえも返す。
「逆に、れいちゃんこそとても優しい人だと思う。自分の意見を正直に言葉にして他者に伝えることができるのって、ある種の優しさじゃないですか。普通はそれを押さえこんじゃうときもあるんだけど、誰かに攻撃されても伝える意義があるからって確信をもって発言できるのは、本当に人としてリスペクト。れいちゃん以外にそういう人に出会ったことない。崇拝するような感覚に近いです」
心の底から信頼し合っている2人だが、それでも日々のコミュニケーションこそが大事と熱く語る。
「アイラインの長さのミリ単位で、顔の印象って変わりますよね。それと同じで、これだけ長く一緒にいてソウルメイトだと思ってても、ちゃんとコミュニケーションをとることは大事。感情のズレを直していけるから。それに、そうやって細かくコミュニケーションをとること自体も愛おしいし」(りえ)
「こんなに一緒にいるのに、ライブのパフォーマンスもまだまだ発見だらけ。ステージで自分が前にいるときは、当然りえちゃんの姿は見えないじゃないですか。でもこの前、撮影可のライブのときに映像で見ちゃったんですよ。そしたら、見たことないポーズをして、その顔知らないんだけどっていう表情をしてて。こんなにまだ私の見たことのないりえちゃんがいたのI?って新鮮にびっくりした(笑)」(れい)
「私は、プライベートで遊ぶときにまだまだ知らないれいちゃんの一面を知ることができて嬉しい。この前は、お姉ちゃんの甥っ子と姪っ子とプールに行ったときに、れいちゃんがついてきてくれて。そしたら、子ども相手にこんないっぱい話してこんなマジで接するんだI?って驚きでした(笑)」(りえ)
決められた型は要らない。れいとりえの“真実”だけがある
りえは、幼少期にフィリピンのセブに住んでいた。もともとスペイン統治時代の影響が強く、アジア圏の中でもラテン文化が色濃い国。そこでは、音楽が鳴れば踊るのが自然なことだったという。だからこそ、歌わなきゃ踊らなきゃというアイドル的な規範が自身の中にひとつもない。
「アイドルをやっている自覚もないし、音楽をやっている自覚すらもないです。濡れた髪をドライヤーで乾かすのと同じような感覚で、ただただ好きな音に乗って踊ってるだけ。教科書を見せられているような歌やダンスには興味がない。だって歌もダンスも、本来は自然発生的なものだから」
そんなりえが好む音楽は、シャキーラやタイラといった、ラテンに近い自由なヴァイブスを感じるアーティスト。一方、れいは「リアルだから」という理由で国内のラップミュージックを好んで聴くそう。〈REIRIE〉からは、2人の間にある真実しか伝わってこない。
「そもそも、周りがニコイチって言ってるだけで、そういう意識すらもないです。他の女性2人組アイドルとか、百合とか、既存のカテゴリーに収められた時点で何か違うなって思う。概念とか名前とかより前に、私たちは私たち。だから、おしゃれなユニット名とかも必要ないんです。れいとりえで、REIRIE。〈REIRIE〉はただ私たちが一緒にいたいからいる、楽しそうだからやってみる、その積み重ねでしかないから」(れい)
「私たちの表現には、パッと見たときに一瞬で感じるパートナーとしての絶対的な関係性が、ビジュアルに漏れ出ていると思います。それは言語化できない何か。だからこそ今まで、狙ってやったことなんて一つもない。キスしてる写真とかも、あくまで誰かが捉えた一瞬にしかすぎないんですよ。だから、くっついて!って言われてくっつくのは何か違うなと思っちゃう。女の子2人組アイドルって過去にもいて、たまにそういう方たちのことを引き合いに出して言われたりもするんですけど、そんなのも考えたことがなかった。あ、2人組っていうカテゴリがあるんだ?って言われてから初めて知ったんですよね」(りえ)
2人が、2人でいる限り
アイドルと括られることに抵抗はないか?と訊くと、少し考えた表情でれいが答えてくれた。「アイドルとカテゴライズされることに対しては、半ば諦めてるかな。そういうものなのかなって。別にそれは嫌ではないし、間違いなく誰かのアイドルではあるし。それを否定すると、ファンを否定することになってしまうから」
REIRIEの企画は、2人がやりたいことを喋っている中で自然と生まれるそう。りえが幸せそうな表情で教えてくれる。「アイデアを出すのはれいちゃんが多いかな。お茶会しない?とか夏祭りやろうよ!とか。れいちゃんって人を喜ばせる天才だから、これをしたら皆が喜ぶだろうっていう発想がどんどん出てくるんだよね」。
れいは、すかさず返す。「りえちゃんにこれを着せてみたいな、って考えるだけで次から次にアイデアが出てくるんだよ。そしたら、それをりえちゃんがまとめてスタッフに伝えて……ってそういう流れ」
REIRIEの世界観は、ふたりが思うかわいいとカッコいいが絶妙な塩梅でミックスされ溶け合っている。MVやアートワークは、色遣いも質感も、夢の中でしか出会えないおとぎ話のよう。ファンはその世界観に共感しているがゆえに、多くの人がファッショナブルな着こなしでライブに集う。2人がモデルを務めたことがある〈rurumu:〉などのブランドを入り口にファンになった子も多く、一般的なアイドルと比べて特に女性が多いのが特徴だ。
多くのグループが口を揃えて「女の子のファンがもっと欲しい」と言うが、そう伝えるとまさに〈REIRIE〉らしい答えが返ってきた。
「でも、その発想自体がもう違うのかも。そういうのは意図してやるものではなくて、自然と集まってくるものだから」(りえ)
どこまでも軸がブレないふたりの話を聞いていると、「アイドルとは?」という大きな問いについて、自然と深い思考が巡ってしまう。そんなREIRIEは、先日メジャーデビューを発表したばかりだ。
「関わってくれる方が増えれば増えるほど、〈REIRIE〉でいられる期間が長くなるということなので。書面的にも物理的にも、一緒にいる理由ができる。それによって、ファンの皆さんにも恩返しがしたいです」。〈REIRIE〉は、2人が2人でいる限り、終わらない。ここには、アイドルという枠組みには到底収まりきらない大きな居場所が広がっている。
REIRIE
れいりえ/黒宮れい(左)と金子理江(右)によるユニット。衣装を手がける〈rurumu:〉と生み出す神秘的なビジュアルに対して、強くも美しくもある音楽性を持ち、唯一無二の世界観でファンを魅了する。今年、ついにメジャーデビューが決定。2026年2月1日から全国12都市を巡るツアーを開催予定。