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困ったときのハウツーラン。トレーニングを始めるなら

アイテム選びやランニングフォームで悩むビギナーから、フルマラソンのレースに向けたトレーニングに取り組もうとするランナーまで、困ったときにはご一読を。目標は、「4時間くらいで42.195km」です。

初出:BRUTUS No.678『世界で走ろう!』(2010年1月15日発売)

illustration: Suzy Amakane / supervision: Kenichi Shirakata

Gear:
自分のカラダに合った道具をじっくり時間をかけて選ぼう

「よし、俺も走ってみよう」と思ったときが始め時。ここではまず、長距離ランナーとして準備すべきものとその選び方を解説しよう。

まず最初に揃えたい必須の5アイテム。

スージー甘金 ランニングシューズのイラスト
多くのメーカーから、たくさんのモデルがリリースされているランニングシューズ。自分に合う1足を見つけられるか?そもそも、どこをチェックする⁉さあ、困った!

ランニングシューズ

初めて買う場合は、ランニングに力を入れている大型スポーツ店でスタッフのアドバイスを聞きながら選ぶこと。普段の靴選びでは、デザインが気に入って大まかなサイズさえ合えばなんとかなるが、ランニングシューズの場合、そうはいかない。足長は同じでも、足の指の長さ、甲の高さ、踵の細さ、土踏まずの高さ、踵の傾斜角度などはそれぞれ違う。少しでも合わないシューズは靴擦れやマメの原因にもなるので、注意が必要だ。

走るときには足に体重の3倍近い負担がかかる。長い距離を走るほどダメージは当然増すので、まだ足ができていない初心者は、ソールの厚いクッション性に富んだシューズをすすめられるはずだ。

足を入れたらまず踵をしっかりと合わせる。踵(かかと)のホールド感があり足回りがジャストで(靴紐を通す部分が開き過ぎたり、閉じ過ぎたりしない)、爪先に1cmくらい余裕のあるサイズがいい。このとき小指や踝(くるぶし)にシューズが当たって違和感がないかを確認。大事なのは、履いて走りたくなるフィット感。同じ重さでも、気持ちよく履けたシューズは爪先と踵のバランスがとれているので軽く感じる。

エントリーモデルは各社からたくさん出ている。それぞれ特徴があるので、何足も試し履きすることが、自分に合った1足を見つける秘訣。シューズ選びは足が大きくなった夕方の時間帯が望ましい(運動不足の人ほど朝夕の差が大きい)。ただ、この時間帯はお店も混む。店の空いているときを狙って、じっくり選ぼう。

■ ランニングソックス

ランニングソックスは通気性がよく、吸湿性・速乾性に優れているので、シューズ内の蒸れを軽減してくれる。ただし耐久性には優れないものが多い。最近は五本指型の方が爪で指を傷つけないこともあり人気だ。シューズはこのソックスを履いて選んだ方がよい。

■ ランニングシャツ

吸汗・速乾性素材の半袖タイプをまずは1枚。大会の記念品はTシャツが多いので、すぐに溜まる。フロントチャックが付いているものは、暑いときに開けられて便利。季節によってパイル地の長袖、ノースリーブもあると快適だ。

■ ランニングパンツ

丈の長さは好みで。動きやすくて寒くないものを。初心者はポケットの付いているものがなにかと便利。インナー付きか否かも好みだが、付いている方がインナーパンツを買わなくて済むし、いざトイレというときにも楽ちんだ。

■ 腕時計

マラソンは1kmを何分で走るかでペースを考えるので、それを計測できるラップ機能が必要になる。30ラップ計測可能なら充分(フルを走るときは5km何分で考える)。様々な機能付きのものがあるが、初心者にはあまり必要ない。

マストではないけれど、あれば走りがより快適に

■ デイパック、ウエストバッグ

長い距離を走る練習のときにあると便利。ペットボトルや軽食、雨具、カギ、音楽プレーヤー、小銭入れ、携帯電話を入れて。ただし、汗で中身が濡れたり湿ったりする可能性があるので注意。ウエストバッグは背中側につける。

■ タイツ

着圧によるポンプ効果で筋肉をサポートし、リカバリーを促進するタイプのタイツが花盛り。ただ、このタイプは価格が高く、洗濯でダメージを受けやすいので、試着し、きちんとサイジングすること。タイツの下にパンツを穿くかどうかは好みだが、穿くなら綿ではなく、速乾性に優れたランニング用のインナーパンツを。穿きたくないけれど、モッコリが気になるという人は、タイツの上にボックス型のランニングパンツを。

■ その他

帽子、手袋、アームカバー、サングラス、トラックジャケットなど、季節や天気によってあった方が快適に走れるグッズは多い。少しずつ揃えよう。

Form:
柔らかいタッチでゆっくり。蹴らない走りを身につける

スージー甘金 ランニングのイラスト
同じ距離を走っても、乱れたフォームでは疲労度は倍増。快適なランニングを続けるには、正しい姿勢を身につけたい…。だけど、何を意識して走ればいいか?さあ、困った!

次に走るフォームだが、その前にフルマラソンの目標タイムを決めよう。とはいっても、42km走る時間なんて初心者には想像もつかないだろう。もちろん完走が目標でもいいのだが、制限時間が6時間の大会の場合、15kmくらいまでをゆっくり走り、残りを速めに歩けば、制限時間になんとか間に合う。つまり42km無理して走らなくても、実は完走できるのだ。でも、これではせっかく大会に参加してもあまり楽しくはない。

4時間12分でフルを走る
フォームを身につける

そこで目標をネットタイム(スタートラインを過ぎてからゴールするまでのタイム)で4時間12分としてみた。1km6分のペースである。これならしっかり走った感じも味わえるし、東京マラソンなら上位からだいたい3分の1くらいに入る立派なタイム。

そんなの無理と思うなかれ。学生時代に運動経験がなくても、習慣的なジョグに加え計画的な練習をすれば、充分に可能な目標である。2008年の東京マラソンだと、タレントの安田美沙子ちゃん(4時間25分)と一緒に走れるレベルだ。お、俄然やる気になったね。

まず100mを36秒で走ってみる。これが目標とするマラソンペース。結構ゆっくりに感じるはずだ。このペースを維持するには、省エネ走法を覚える必要がある。

真っ直ぐに立ち、遠くを眺める姿勢から重心を前に倒すと、倒れないように自然と脚が前に出る。その踏み出した足の踝の上に同時に膝、腰、肩、頭を運んでいく。ざっくり言えば、走るのはこれの繰り返し。頭のてっぺんから糸で真上に吊られているイメージで腰を高く保ち、上下運動を少なく。膝は深く曲げ過ぎず、重心を落とさない。スキーのクロスカントリーをエアでやる感じである。

小さいときから速く走る動きしか意識していないので、つい膝から下を振り出し、地面を蹴ってしまうが、これでは長丁場は持たない。ただ、ゆっくり走るといっても、小さく縮こまって走るわけではない。脚の付け根がみぞおちくらいにあるイメージを持とう。実際、脚を上げるときに使う筋肉は脊柱のみぞおちくらいの位置から始まっている。ここを支点に左右の腰骨を交互にしっかり前に出す感じで脚を動かす。

着地は踵、というと後ろ過ぎてしまう人が多い。むしろ踝の下で接地し、足首の角度は変えずに重心を前に移動し拇指球(ぼしきゅう)で地面を押す感じ。考え過ぎるとぎこちない動きになってしまう。軽快にリズムを刻みながら、柔らかく走ろう。

ゆっくり走ろうとして、爪先で地面を掘るように着地したり、爪先を立て、踵でブレーキをかけながら走っている人を見かける。これはよくない例なので注意したい。

上体は肩甲骨を寄せ、胸を開く。くたびれてくると猫背になる。すると肺が小さくなり呼吸が苦しくなる。呼吸はゆっくり深く。4歩で鼻から吸って6歩で口から吐くくらいのペースだ。特に息を吐くことを意識しよう。

意識したいフォームのポイントのイラスト

Course & Motivation:
飽きないコース設定と、モチベーション維持の工夫を

スージー甘金 ランニングコースのイラスト
散歩とランニングでは、コース設定のポイントは異なるのか?誰の心にも潜む「さぼってしまいたい」という悪魔の囁きにはどう対処する…?さあ、困った!

フルマラソンを目指すなら週に3度くらいは走る習慣をつけたい。では、いつ、どこを走ればよいのか。近所に河川敷や公園などがあればいいが、ない場合は、信号や交通量が少なく、できるだけ止まらずに済む道を選ぶ。段差もない方が安全。商店街のような歩行者が多いところは避けよう。途中に公衆トイレがあれば言うことなし。

走る時間帯は足元の明るい朝や日中が望ましいが、仕事や付き合いもある。週間天気予報と自分のスケジュールを眺めながら、今週はこの日の朝とこの日の夜に走るぞ、というようにフレキシブルに決めるのが現実的。

夜は、街灯が多く明るい道を、明るい色のウェア、反射シールの付いたウェアや帽子、LEDライトを身に付け、自転車やクルマに注意して、事故に巻き込まれないように走る。自分が事故に遭わない注意も必要だが、人に迷惑をかけないようにすること。例えば、暗い夜道は通勤帰りの女性にとっては不安なもの。ランナーっぽい格好で走った方が誤解を招かない。

少し上達してトレーニングが本格化してくると、やはり大きな公園やサイクリングロードで走った方が、距離もわかるし、スピードも上げられるので効率的だ。時に女性ランナーの後ろを同じペースで走ることになり戸惑うことがある。こんなときは間隔をあけるなり、方向を変えるのがエチケット。ぴったり後ろにつくのはよそう。

コースの距離は携帯電話、iPod、「キョリ測」などのサイトを使って調べよう。いくつかコースを作っておくとマンネリにならない。

ジムのランニングマシンはどうだろう。路面が自動で動き、クッション性も高いので、脚が流れたり飛び跳ねるフォームになりやすいといった欠点はある。しかし4時間ちょっとが目標のレベルなら、大切なのは走る習慣をつけること。夜でも雨でも走れるランニングマシンを有効に使うようにしたい。

みんなだって走りたくない
気持ちと戦っているのだ

走る習慣をつけるのに最も重要になるのがモチベーションの維持。ランナーはみんな走るのが大好き、というわけではない。誰でも今日は走りたくないという悪魔の囁きと日々戦っているのだ。

様々な誘惑に惑わされないようにするには、まず練習ノートをつけること。ネットで記録できるサイトもあるが、初心者はノートの方がおすすめだ。走った時間(距離)、コース、天気、気温、風の有無、練習内容、走っていて気がついたこと、そして走らなかった理由などをメモする。溜まった記録を読み返すとやる気が出る。

ランニングを題材にした映画や本も刺激を与えてくれるし、新しいシューズやウェアを買うのも気分が高揚し、やる気が増す。

友達と走るのもいいカンフル剤。ランニングは孤独な作業なので、ライバルや師匠がいると心が折れずに継続できる。走る仲間がいない人は地元の走友会やランニングクラブに参加してみてはどうだろう。初心者も歓迎してくれる。

ランニング気分が高まる5冊

Training:
ジョグと週末ポイント練習で4時間12分完走を目指そう

スージー甘金 トレーニングのイラスト
フルマラソンに挑戦!大会までに持久力を上げるため、急に距離を延ばしたりペースをアップ。でも、もっと効率的な練習方法があるんじゃないの?さあ、困った!

無計画に走っても、走力はなかなかアップしない。10〜12ヵ月後にフルデビューを目標に、レースまでをいくつかの期に分け、各時期で練習方法を変え、効率的にレベルアップを目指そう。理想的なメニューは以下の通り。平日はジョグで走力の維持、週末はポイント練習(主なトレーニング方法はコラムで解説)で少し追い込むというように、1週間でメリハリを。もちろん、体調や気候によってメニューを調整するのも大事だ。

本番前に1度はハーフの大会に参加しよう。そのタイムに2.07〜2.20を掛けた数字がフルの一つの目安タイムになる。つまりハーフが120分ジャストなら、フルは4時間9〜24分くらいになりそうということだ。

しっかりと段階を追って
効率的にステップアップ

■ 準備期1

まずは距離を気にせず、30分動けるカラダ作り。ゆっくりペースで15分走って5分早足、そしてまた10分走るといったように、歩きを含めてもいい。次の日も走りたくなるくらいでやめて、疲れを残さない。走るのが楽しいということを覚えよう。できれば3日は空けず、週に2〜3回は走る習慣をつける。30分楽に走れるようになったら次のステップへ。

■ 準備期2

平日30〜40分のジョグを週2回。距離は気にしない。ポイント練習は、週末の60分ゆっくりペースのジョグ。これが楽にできるようになったら次のステップへ。

■ 走り込み期1

これ以後、平日は30〜60分のジョグを週2〜3回続ける。この期のポイント練習は週末90〜120分のLSD。ジョグよりもさらにゆっくりペースで、スタミナをつけ、時間に対する耐性を養う。つい速く走って早く練習を終わらせたくなるが、それでは伸びない。無理なく120分のLSDが反復できるようになったら150分。180分が余裕になったら次へ。

■ 走り込み期2

ポイント練習は120〜180分のLSDまたは15km(〜25km)のロング走。ロング走はLSDよりもキロ30秒くらい速いペースから始める。距離も少しずつ延ばす。最終的にはレースペースより10秒くらい遅いペースで25kmを走れるように。力がついて余裕ができてきたら、10〜15kmのミドル走かビルドアップ走にしてもいい。

■ 仕上げ期

レース3〜6週間前のポイント練習は120分LSDまたは15km(〜25km)の少しペースを上げたロング走。ハーフレースに参加してみるのもいい。少なくともレースの1ヵ月前までに1〜2度、ゆっくりペースで30kmロング走を経験しておくと本番への自信がつく。

■ 調整期

レース前1〜2週間は練習量を落とし、疲労を抜く。レースの週は4日くらい前に10kmのレースペース走。疲れているようなら回復に努め、前日か2日前に1〜2kmをレースペースより10〜20秒速いペースで走り刺激を与える。

主なトレーニング方法

ジョグ(6'10〜7'00/km)
自然に苦しくないペースで走る。練習の基本で疲労回復、身体機能の低下を防ぎ、緩やかな走力向上も期待できる。

LSD(7'00〜8'30/km)
Long Slow Distanceの略。長時間をゆっくり走るマラソントレーニングの基本。90〜180分程度が目安。

ビルドアップ走(設定は自由)
8〜15kmを3〜4段階に分けてペースをだんだん(キロ5〜10秒ずつアップを目安に)上げていく練習方法。

ミドルペース走(5'00〜6'00/km)
10〜15kmを、レースペースよりも速く設定した一定のペースで走る。

ロングペース走(6'00〜6'45/km)
15〜25kmを、レースペースよりも少し遅くした一定のペースで走る。

レースペース走(6'00/km)
15kmをレースペースで走る。本番のペースをカラダに覚えさせる。

*( )内は4時間12分を目標にした人のスピードの目安。

Care:
少しの油断が故障を招く。カラダの手入れを怠るな

スージー甘金 ランニング後のケアのイラスト
故障しないことも、ランニングを楽しむためには大事。それにはしっかりとカラダをケアしなくては。具体的には、どんなことをするべきなのか?さあ、困った!

ランナーに故障はつきものだ。痛みを感じたら無理にストレッチはせず、保冷剤や氷などを患部に当てて、15分くらい冷やす。走る前は痛いが、走り出すと痛みが治まるというケースがある。慢性的な故障にもなりかねないので、まず医者へ。レントゲンに現れない筋肉や腱の炎症である場合が多いので、できればスポーツドクターが望ましい。

誘惑に負けず、土台作りは
時間をかけてじっくり行う

故障はカラダ全体の弱点が複合的に作用し、代償的な動きから発生する場合が多いので、まず長く走るのに適したフォームを身につけることが肝腎だ。

また、走るのが楽しくなり始めると、自分が今、どこまでできるのか試したくなる。つい急に距離を延ばしたり、スピードを上げたりしがちだが、そんな気持ちに流されてしまうと、必ずと言っていいほど故障を招く。

故障を防ぐには、ウォーミングアップとクーリングダウンを習慣づけることも大事。時間がないと、ついつい手を抜きがちになる。股関節、膝、足首、足裏などは特に入念なストレッチを心がけよう。クーリングダウンの際には、急に止まらず、少しずつスピードダウンしながら5〜10分ほど走り、心拍数をゆっくり下げていくこともカラダに負担をかけないポイント。

マッサージも故障予防に効果的だ。脚は小さなたくさんの骨と、それを繋ぐ細かな筋肉でできている。走っても走らなくても、風呂上がりには爪先から太腿までマッサージをする習慣を。スキンクリームを塗るとやりやすい。

走り込みの時期は、練習の量に対してリカバリーが追いつかなくなるので、月に1度、スポーツマッサージを受けるのもいい。自分では気がつかなかった欠点を施術師が指摘してくれることがある。

もちろん、ケアで最も大切なのは食事=栄養である。トレーニングが終わったら、すぐに充分な水分補給を。アミノ酸サプリなどでタンパク質を補うと疲労回復が早い。練習中の給水もこまめに。汗をたくさんかくときはミネラルが豊富な飲料、長い距離を走るときはノンカロリーではなく、カロリーのあるスポーツドリンクを。

ランナーは貧血になりやすいので、レバーやアサリなどを積極的に取り入れ、鉄分の多い食事を心がける。そのときは、ビタミンCと一緒に摂(と)ると吸収がよい。よく脚が攣(つ)る人はミネラルのバランスが崩れている可能性がある。野菜や果物を意識して食べるように。

季節によって行うケアもある。冬は乾燥しやすいので、肌にローションやクリームを塗って保湿を心がけよう。唇も荒れやすいので、リップクリームは必需品。夏の紫外線は肌を老化させるので、日焼け止めクリームを顔などに塗るようにしたい。サングラスもあると疲労感が全然違う。

長く走ったあとは、シャワーを浴びるときに、冷水と温水を30秒交代で尻〜太腿裏〜ふくらはぎにかけると疲労の回復が早い。

故障が起こりがちな部位と原因

腰:疲れが溜まっている。腰を反らし過ぎたフォーム。

股関節:股関節の柔軟性の欠如。腰が落ちたフォーム。体幹が上手に使えていない。アップ不足。

膝:脚、尻の筋力不足。距離やスピードが実力に合っていない。

脛(すね):急に距離を延ばし過ぎ。

ふくらはぎ:膝から下を振り出して、地面を蹴って走っている。

足首:踵(かかと)が地面に対して大きく傾いて着地している。体幹がうまく使えていない。

足の甲:シューレースをきつく締め過ぎ。着地がうまくいっていない。

足の裏:脚力不足。ストライドが大き過ぎ。走り込み過ぎ。

Race:
時間と気持ちに余裕を持って
初めてのレースを楽しむ

スージー甘金 ランニングレースのイラスト
初めてのレース当日。練習はしたつもりだけど、わからないことばかりで不安は尽きない。持っていくべきアイテムや、レース中のマナーだって知らないし…。さあ、困った!

デビュー戦を選ぶなら、参加者が5000人以上の大きな大会の方がお祭り感があって楽しい。制限時間も6時間くらいの緩やかなレースの方がムードも和やか。ただ、現在はあっという間に定員に達し、締め切りとなる大会も多い。気になるレースは応募開始時期も確認しておこう。エントリーは、「ランネット」「スポーツエントリー」などのサイトからが便利だ。

エントリーするとナンバーカード引き換え証と大会要項が送られてくる。注意事項をよく読むこと。
基本的な持ち物以外に用意したいのが、5kmごとのペース表。キロ6分の場合は計算しやすいが、例えばサブ4(4時間切り)狙いならば、キロ5分40秒のイーブンペースが理想。5km28分20秒、10km56分40秒、15km1時間25分00秒……とテープに書いて、当日腕に貼ると便利(サブ4のペースタイムはページ下に記載)。

前日に何を食べるかは気になるところだが、4時間ちょっとで走るレベルなら、神経質にならずに、炭水化物を多めにくらいでいい。

会場には2時間前に着いて受け付けを済ませたい。大きな大会ほどトイレは大混雑。30分待ちは当たり前なので、必ず家で済ませておく。それでも会場でしたくなるかもしれない。充分に時間の余裕を。となると、朝食はかなり早い時間になる。空腹防止に会場で持参のおにぎりを1つ食べるといい。

ペースはできるだけ一定に保って走ろう

朝の更衣室は混雑するので、レースウェアを着て出かけ、着替えを持参する方が慌てない。汗や給水所の水で濡れるので、シューズの替えも忘れずに。乳首には擦れないように絆創膏を貼ろう。

貴重品は荷物預かり所に預ける。スタート地点に整列したとき、レースウェアだけでは寒いときは、大きなゴミ袋に穴を開けて頭からかぶって寒さをしのぐ(温まったら給水所で係員に渡す)。

スタートの号砲が鳴っても、しばらくはだらだら歩き。スタートラインを越えるまで20分くらいかかる大会もある。要注意なのは関門制限。時刻で決まっているので、遅くスタートしても考慮されない。

コースにもよるが、たいてい5kmくらいまでは混雑している。すり抜けて前に出ようとジグザグに走らないこと。空いてくる10〜15kmはスタート時の遅れを取り戻そうとスピードを上げてしまいがちだが、ここはぐっと我慢。

給水は喉が渇ききらないうちにこまめに取る。お腹が空くのが不安な初レースはエネルギージェル(スポーツ店で売っている)を3本ポケットに入れて10kmごとに補給しよう。ただし、これはかなり甘いので、給水所に合わせて飲まないと口の中が甘ったるく、手もベトベトになって気持ち悪い。

30kmを過ぎたら経験していない未知の領域。ここからどれだけ我慢できるか、カラダにどんな変化が現れるかを楽しみに、フィニッシュを目指そう。みんなが虜になる理由がわかるはずだ。それでは、ようこそ、マラソンの世界へ!

守りたい大会マナー

・大会要項に明記されていることをスタッフに尋ねない。

・目標タイム別整列スタートのとき、実力以上に速いタイムの列に並ばない。

・スタート時、前の人を手でかき分けて走ったり、ジグザグに走ったりしない。

・給水所の紙コップはコース脇のゴミ箱に捨てる。

・コース上につばを吐かない。立ちションをしない。

・混雑しているときは友達と横一列に並んで走らない。

・人を抜くなどで進路を変えるときは、手で合図を送り、後続のランナーと接触しないように。

・止まるときは後ろのランナーとぶつからないようにコースを外れて止まる。

・声援には手を振ったり、ありがとうと声をかけたり、ハイタッチで応える。

・ゴミは家まで持ち帰る。