世界レベルのアートが見られる商業施設
ここ数年でアート関連の新スポットのオープンに沸く香港で、見逃せない場所の一つになっているのが2019年にオープンした「K11 MUSEA」だ。ビクトリアドックサイド地区にできたこの巨大ラグジュアリーショッピングモールは、ハイエンドブランドの出店や飲食店に加えて、ホテルや高級レジデンシャルも併設される複合施設内にある。香港のウォーターフロントを活性化させているアイコニックなこの施設内で目を引くのは、空間に点在する数々のアート。それも世界レベルのものが多数集まっているのだ。
G階にはエルヴィン・ヴルムの彫刻、B1階にはPaola Piviのインスタレーション、1F階にはベティ・ウッドマンの立体ペインティング、8階には大竹伸朗の絵、G/F階にはジョン・バルデッサリの巨大な立体作品など、なんとビル全体で合計160点以上の作品が展示され、商業とアートが融合したパブリックに開かれたアートスペースになっている。
世界的なキュレーターを招いた企画展も開催中
パンデミック後に大々的に再開を果たしたアートフェア月間に合わせて、3月20日からは主要都市のグラフィティとストリートアートをまとめた香港初の本格的な展示「City as studio」も開催中だ。
ジャン=ミシェル・バスキア、キース・ヘリング、FUTURAなどの代表的なアーティストから、KAWSやAIKO、HAROSHIなどの新しいアイコンまで30人以上のストリートアーティストによる作品が一堂に会している。キュレーションを担当したNYのギャラリスト、ジェフリー・ダイチ氏は、「ポップアート以降最も大きなムーブメントと言えるこの“ストリートアート”はティーンエージャーが作ったものです。そしてそれが最終的に世界的な現象になりました。私は彼らが誰の許可も得ずにアートを制作する姿に、とてもインスピレーションを受けてきました。まさに表現の自由の象徴ですよね。素晴らしい美術館やギャラリー、オルタナティブなアートスペース、アーティストやコレクターの活発なコミュニティなど、アートのすべての要素があるここ香港でこの展示ができることをとてもうれしく思います」とこの開催を祝した。
会場では、ジェフリー氏本人による作品説明のツアーや、アーティストのAIKOやリー・キュノネスが参加するトークイベントも開催され、女性としてグラフィティに取り組むことについてや、ストリートアートがストリートから切り離されて美術館やギャラリーで展示されることの是非についての興味深い議論も繰り広げられ、観客とのインタラクティブな展示形態も印象的だった。
香港のみならず、中国本土への展開も
今後、上海、広州、瀋陽など、中国本土の6都市でも彼らが企画するこのようなアートイベントによって世界的なアートワークが次々と披露される予定だ。また、K11グループは、2024年には現在の倍の広さに拡張されるといわれている香港国際空港近くに新たなショッピングモール「11 SKIES」を作るプロジェクトも現在進行中。このモールの広さは「K11 MUSEA」の35%増で、ショッピングのみならず、中国全体のミレニアル世代の新しいグローバル・アイデンティティを創造すること、コミュニティや新しい職場環境の在り方を探求することを目的としているという。香港のみならず、中国本土含めて野心的に広がりを見せるK11の動きに目が離せない。