繊細さとポップさ、目指したのはその両立。
「ジャケット写真の打ち合わせの時、私が窓から外を眺めているのか、何をしているのかわからない雰囲気にしたくて、それは言語化すると“希望”を探してる感じなのかなって」と今回のアルバムタイトルの理由についてジャケットを見ながら話す塩塚モエカさん。
「社会がもっと良くなったり、幸せになったり、なにか足りなかったり……。前のめりにそこに向かっている曲もあれば、心の中でずっと悩んでいるものもあります。実は、コロナのタイミングで新宿に引っ越しをしたんです。あの時期に東京の中心で過ごしたという目線がどの曲にも入っていますね」
内省的な心情を綴った歌詞、シャープでありながら繊細なサウンド。今までの羊文学らしさはそのままに、塩塚さんいわく、新たにチャレンジした楽曲も今作には入っている。
「わかりやすいところだと最初にシンセの音が入っている『OOPARTS』。あとはリズムをタイトに仕上げた『パーティーはすぐそこ』。この楽曲はとにかく練習を重ねましたね。全体の雰囲気は今まで通りですが、一つ一つの音が新しいです」
どんな方向性で行くのかはあまり話し合うことがないが、今回はアレンジについての話し合いを重ねたという。ドラムのフクダヒロアさんは「1曲目の『hopi』という曲では、ドラム3点でバスドラも1回ずつしか打たないで、心臓の音をイメージして音作りしたのが新しい挑戦でした」と語る。
一方でベースの河西ゆりかさんは、「どの曲も思い入れがありすぎますが(笑)。『パーティーはすぐそこ』と『キャロル』は何回も違うメロディが途中に入っていたりカットしたり、構成をギリギリまで考えてましたね」と制作での苦労を話してくれた。
全曲作詞、作曲を行った塩塚さんにとって、特に思い入れがあるのは7曲目の「くだらない」。「ギターがずっと同じ進行で、申し訳ないんですがドラムとベースで展開を作らないといけなかったので試行錯誤して、良い出来に仕上がりました。皆に感謝です」