文・小宮山雄飛
ひとり呑みというと、寡黙な主人がいる老舗居酒屋のカウンターかなんかで、私語厳禁、一見の客は常連さんの厳しい視線に耐えながら、ツマミ一品で日本酒をチビチビやる、なんていうストイックなイメージを抱く人もいるかもしれませんが、実際はそんなにハードルの高いものではありません。
例えば友人と呑む際、ちょっと先に着いちゃったので、別のお店でひとりで一杯やっておく、これだってひとり呑み(呑んべえ業界ではこれを0次会と呼びます)。
あるいは呑み会からの帰り際、ちょっと呑み足りないので、近所のお店にふらっと寄って一杯呑んで帰る、これもひとり呑み。
さらには平日にひとりランチに行って、午後も仕事あるけど、まぁたまにはいいか、なんて食事とともにビールを一杯、これだって立派なひとり呑み!(まぁ、立派かどうかはわかりませんが……)
ひとり呑みというのは、そうやって気軽にひとりでもお酒を楽しもう、というだけで、なにも難しいルールなどないのです。
嬉しいことに、最近ではおひとり様に適したお店のバリエーションも増えているので、まだチャレンジしたことないという人は、今こそデビューの時なのです!
例えば新代田の〈えるえふる〉はレコード屋さんと立ち呑み屋が合体した、全く新しいスタイルのお店。レコードショップに併設されたお店なんていうと、小洒落たカフェを想像しますが、お酒はサッポロの赤星にキンミヤ焼酎など、酒呑みのツボをしっかり分かったラインナップ。
ツマミも1品150円からと、下町酒場ばりの良心価格。ガラス張りのギャラリー風の店内で、独自のセンスでセレクトされたインディーズCDを試聴しながら酒を呑むなんていう、マニアックなひとり呑みを堪能できます。
初心者や女性にもお勧めしたいのは、西小山の〈タヰヨウ酒場〉。こちらは大衆酒場でありながら、今人気のクラフトビールも楽しめるお店。外観は、赤提灯が目印の、昔ながらの大衆酒場。品書きも、1本120円からの焼きとんに、280円のマカロニサラダと、これまた大衆的。
しかしカウンター前にずらっと並んだタップからは、こだわりのクラフトビールが注がれる!このギャップが楽しい、ハイブリッドなお店。ひとりでゴリゴリの下町酒場はまださすがに、という初心者や女性にもぴったりです。
個人的に注目しているのは、今までありそうでなかった中華立ち呑みという新ジャンル。呑んべえの天国・大井町のすずらん通りにある〈臚雷亭(ろーらいてい)〉では麻婆豆腐とホッピー、よだれ鶏とハイボールなんてナイスな組み合わせを、立ち呑みスタイルで楽しめます。
角打ちでさくっとひとり呑みしたい、という人にお勧めなのは、神泉の交差点にオープンした〈酒みさわ〉。こちらは元々地元の人に愛される、家族経営のコンビニエンスストアだったのですが、コンビニの形態を半分残したまま、店内でも呑める角打ちスタイルを導入。
しかも店内半分が立ち食い蕎麦屋にもなっているという、おそらく日本でもここにしかない、立ち食い蕎麦コンビニ角打ちという、実にユニークなお店。
煌々と明るいコンビニの店内で、昼からひとりで呑むというのは、若干恥ずかしさもありますが、夕方5時を過ぎると、ひとりまたひとりと、仕事終わりに軽くビール(もちろん缶)を一杯というお仲間が来店してきますので、ご安心を。
立ち呑みの角打ちだから、お通しもなければ、もちろん席代も、めんどくさいコースもない。呑みたいもの、食べたいものを棚から取って、レジで会計したら、あとは好きに楽しめばいいだけだから、おひとりの気ままな呑みには打ってつけです。
どうです、知ってみるとひとり呑みって、思ったよりハードル低くて、楽しそうじゃないですか?なにも、ディープな下町や老舗の居酒屋に行かなくても、今すぐ始められるひとり呑み。みなさんも気軽に始めてみてはいかが?