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鉄板という宇宙で遭遇する。六者六様の広島お好み焼きを巡る旅〜後編〜

大阪と双璧をなすお好み焼きの聖地・広島。だがその種類は「広島お好み焼き」の一言で括れないほど、多様だ。エリアや焼き手によって異なるおいしさ。広島が誇る食文化の深淵を知るべく、海沿い、山間の町を巡っていく。前編はこちら

photo: Kazufumi Shimoyashiki / text: Koji Okano / special thanks: xiaohei

鉄板の向こうににじむ、焼き手の個性

尾道で宿泊し、2日目はまず三原〈お好み焼き てっちゃん〉へ。この地では鶏モツが入った三原焼を提供する店が多く、ここが元祖とされる。レバーや砂ぎも、たまひもなど。一枚にさまざまなモツの食感と風味が存在して、食べ進めるのが楽しい。

「肉屋さんに“捨てるのがもったいない”と相談されたモツを、主人が使い始めたのがきっかけです」
そう話す初代女将・今井イツコさんは、店に立ち始めて半世紀。今は2代目の息子・孝志さんと、行列のできる店を切り盛りする。

お好み焼き てっちゃん(三原市)

西へ進路を取り、今度は呉(くれ)へ。1955年創業〈お好み焼 やました〉で驚いたのが、半月形のお好み焼きだ。「二つ折りにした生地の中には、豚、キャベツ、モヤシなどと一緒に炒め、ソースで味つけしたそばが入っています」と、店主の山下三枝子さん。一見、オムそばのようなのに、呉ではこれをお好み焼きと呼ぶそうだ。生地を折り畳む理由を聞くと、「場所を取らずに、一度にたくさん焼けるから」と山下さんは言う。

お好み焼 やました(呉市)

旅の最後に訪れたのは、広島市〈お好み焼 三八〉。この店では前もって焼きそばを調理し、生地の上に置く。この上に、キャベツを大量投入。じっくりと蒸し焼きにすることで、ソースの旨味がキャベツに染み、何もつけずとも旨いのだ。

「これ、広島のお好み焼きの最も古い焼き方の一つで、地元でオールドスタイルと呼ばれています」と話す、4代目店主・久保まことさん。この調理法を伝承すべく、なんと広島の観光バスガイドから現職に転身したという。「価値あるものを後世に伝えるという意味では、バスガイドもお好み焼き屋も同じです」と、久保さんは人生の決断の真意を語る。

お好み焼 三八(広島市)

六者六様のお好み焼きに舌鼓を打ちながら、鉄板の熱気の向こうには焼き手の横顔、人生が垣間見えた。旅を終えて、ふと彼女たちの笑顔を思い出したら。それは広島を再訪する理由になるだろう。鉄板を挟んだ店主とのやりとりも、広島のお好み焼き巡りの醍醐味なのだ。

お好み焼きを巡る旅、おすすめプラン

MODEL PLAN

〈1日目〉
10:30 尾道着。海沿いの道を散策。
11:30 〈お好み焼 いけだ〉で尾道焼を。
12:30 〈monolom〉で雑貨ハンティング。
13:00 レンタカーを借りて、府中を目指す。
14:00 〈古川食堂〉で府中焼。因島へ。
16:00 〈越智お好み焼き〉で、いんおこ。
18:00 尾道に戻って〈LOG〉にチェックイン。

〈2日目〉
07:00 早起きして尾道を朝散歩。
11:00 〈お好み焼き てっちゃん〉で三原焼。
13:00 〈お好み焼 やました〉で、もう一枚。
14:00 〈巴屋 片山店〉のアイスモナカで休憩。
15:00 〈お好み村〉の中をぶらぶら散策。
16:00 〈アカデミイ書店 金座街店〉を物色。
17:00 〈お好み焼 三八〉で最後の一枚。
18:30 〈ビールスタンド重富 銀山町〉で乾杯。喉を潤したら、広島を出発。

TRAVEL MAP

広島県 お好み焼き屋 地図

旅の出発地は尾道。東京駅から尾道駅までは、新幹線と在来線を乗り継いで約4時間。飛行機なら、羽田空港から広島空港まで約80分。広島空港から尾道駅まで、レンタカーで40分。県内の移動は車が便利。

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