自然にアジャストしていくためのある種の儀式に使う道具たち
私の山登りは、あくまで散歩や旅の過程にすぎません。歩いてみたい場所や見てみたい景色が、たまたま標高の高いところにあるから登るという感覚です。なので、登る山も道具もなんとなくで選ぶことが多いのですが、職業柄か、光学機器にだけはついこだわってしまいます。
この〈LEICA〉の双眼鏡は、とにかくレンズのクオリティが抜群。朝夕や暗い森の中でも、肉眼よりも明るく見えるほどです。山に出かけると、まずは双眼鏡を覗いて、写真を撮ったり、思いついた詩をメモしながらのんびりと過ごします。
これらの行為は、街の気配を徐々に脱ぎ去って体を山に馴染ませていくための儀式のようなもの。そうこうしているうちに、鳥たちがこちらの様子を窺いにやってきたり、急にあたりのもやが消え去って素晴らしい景色が現れたりするのだから不思議ですよね。