漫画とエッセイ、ゴーイングマイウェイな2人の表現一本道
ヒコロヒー
直角さんの漫画、一気に読みました。めっちゃ面白かったです。
渋谷直角
伝わりました?
ヒコ
もう、むちゃくちゃ伝わります。私は、1989年生まれなので、描かれているのは物心がつく前の頃の話なんですが。なぜ、90年代の話を?
直角
僕の青春時代ということもあるんですが、あの時代を否定的に語る人が結構いて。でも俺は楽しかったけどなって。全肯定であの頃のことを描こうと思ったんです。渋谷を発信源とするカルチャーやファッションのこと、お笑いのこと、時代の「気分」を残しておきたいなって。
ヒコ
しかも90年代のことだけど、描かれているのは何者でもない若者たちがもがく姿で。70年代80年代もそうだっただろうし、ゼロ年代10年代20年代、この先も続いていくであろう普遍の話やなって。しかし、渋谷がそんなに怖い町だったとは知らなかった(笑)。
直角
センター街を歩くのはめちゃめちゃマズかったです、当時は。いいスニーカーを履いてると狩られますから(笑)。
ヒコ
私が強く共感したのは、やっぱり、お笑い芸人を目指す若者の話。テレビでネタを観て、見よう見まねで自分も書いてみるとか、私もやってきたんです。YouTubeとか媒体も増えましたけど、いまの子たちもそうやろなって思うし。
直角
ヒコロヒーさんのエッセイも普遍的な若者の思いが綴られていて。ただ、「所持金6円」の日々も、注目されるようになったいまも、諦観みたいなものが一貫して書かれていて、芸人さん的なガツガツした感じとは質が違うなって。
ヒコ
私が始めた10年ぐらい前は、お笑いの賞レースが盛んで、競争的な空気感が蔓延していて、それがすごく苦手だったんです。ネタは創作であり表現。それを競技化する意味はあるの?って。
直角
お笑いも「表現活動」という意識は強いですか?以前ラジオで、「何年かに1度、漫画を描きまくりたくなる」っておっしゃってましたよね。自分の抱える何かを表現できるなら、お笑いの型じゃなくてもいいって感じですか?
ヒコ
生意気言うと、漫画や文章は膿を出すような感覚なんです。やっぱり、いちばん好きなのはお笑い。入れるものはなんでもいいんですが、それを抽出したときにお笑いになっていたいんです。