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ヒコロヒー「直感的社会論」:誕生日くらいは、優しさに甘えて開き直っていたい

お笑い芸人、ヒコロヒーの連載エッセイ第38回。今回から、BRUTUS本誌で人気だったこの連載がBRUTUS.jpにお引越し。「今月のヒコロヒー」も要チェック!前回の「生きていくことは、時にとても複雑なのである」も読む。

text: Hiccorohee / illustration: Rina Yoshioka

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誕生日くらいは、
優しさに甘えて
開き直っていたい。

花

誕生日というものは非常に良い。たまに「もうこの年になると誕生日なんてどうでもよくなる」と言う人も見かけるが、こと私に関しては全くそんなことは思わない流派だ。歳を重ねれば重ねるほど誇らしく好きになっていく。

なぜなら年の数ほど辛く苦しい経験もしていくものだが、それでもちゃんと飯を食い眠り、人に優しくしたりできなかったりしながらも、またこの日を迎えられるところまで生き抜くことをした、そしてそれは周囲の人たちの支えあってこそだったから、と、証明のように感じるからだろうか。

故にわたくしの誕生日である10月15日は私にとってこの世で最も幸せな日付なのだ。1015というキリの良さも気に入っているし、キムラ緑子さんと同じ誕生日だということもなにか自慢げである。毎年毎年、10月10日くらいから非常に嬉しい思いでいっぱいになり、仕事の現場でお祝いされることは通過儀礼的なものだと理解していながらも心はひどく喜び、大小問わず花束などもらおうものなら向こう72時間は幸せな思いでいられる。

一方で、私がこの世に爆誕したことで私が傷つけてしまった人たちもやらかしてしまった過ちももちろんある。しかしそんなのはお互いさまだろう。私はこの小さな器と優れてはない性格ながらその時々を懸命に生きていたのだ。親切ではないが意地悪でもなく折り合いがつかなかったのだから仕方なかろう。そうして誕生日くらいは祝ってくれる仲間たちの優しさに甘えて開き直っていたいものである。

さて35歳。良い数字である。引き続き、盛時に驕らず、衰ても悲しまず、凛として生きていこうではないか。

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