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ヒコロヒー「直感的社会論」:まさか、嘘やろ、それはやめてくれ

お笑い芸人、ヒコロヒーの連載エッセイ第36回。前回の「いつかそんな風に思える誰かに出会えるのだろうか」も読む。

 

text: Hiccorohee / illustration: Rina Yoshioka

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まさか、
嘘やろ、
それはやめてくれ。

随分前に一時期仲が良かった男友達の石原というのがいた。友人たちで集まる時によく会っていたが、家が近所だと分かってからは二人でも飯を食べに行くようなことも頻繁にあった。ただそれだけの、純然たる友人関係であった。

私が引っ越してからは自然と石原と会う機会も減り、数年ほど全く会っていなかったのだが、先日仲間みんなで集まった際に久しぶりに石原に再会した。

皆で楽しく近況を話して小一時間ほどした時、別の友人が唐突に「石原、カノジョできたんやろ?」と石原に尋ねた。その瞬間、石原はパッと私の方を見て、そして目を逸らし、俯きながら「うん……」と小さく言ったのだった。

ん?ちょっと待ってくれ、今こいつ私の反応見たよな?ほんでその後に、なんか気まずそうにしたよな?なんなんや?たった一瞬のことだったが私はその確かな違和感に混乱していた。

確かに石原と仲は良かったが、惚れた腫れたの色気めいた会話になったことはなかったし、そもそも石原は元カレでも何でもない。恋人ができようが何だっていい。むしろさほど興味もない。なのにこの態度は一体なんだというのか。

それからふと気がついた。まさか石原は、私が石原のことを好きだと思っていたのだろうか。噓やろ。確かにあの気まずそうな顔は(きっとまだ俺のこと好きなのに……ごめんな……)みたいな顔だった。噓やろ。石原。やめてくれ。石原。そう思うと、これまでも何度か男の人に勝手に気まずそうに恋人や結婚を報告されたことがあった気がしてきた。

勘違いされることも腑に落ちないが、申し訳ないなどと思われることもショックである。石原的な皆さんへ。覚えておいてほしい。心から何とも思わないため、ぜひ堂々と報告なさってください。

ヒコロヒー「直感的社会論」:まさか、嘘やろ、それはやめてくれ

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