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ヒコロヒー「直感的社会論」:迷惑行為と裁きについて。今一度考えてみる

お笑い芸人、ヒコロヒーの連載エッセイ第20回。前回の「正月にテレビを見ながら思い出したあの違和感」も読む。

text: Hiccorohee / illustration: Rina Yoshioka

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迷惑行為と
裁きについて。
今一度考えてみる。

飲食店での迷惑行為動画の問題に関する議論は熱を帯びていく一方である。元祖飲食系迷惑さんとして名を馳せるのは「おでんツンツン男」さんだと記憶しているが、それから時は流れ、回転寿司系迷惑な人たちや、居酒屋の爪楊枝系迷惑な人たちなど、界隈ではそれぞれに新星が頭角をあらわしている。

「おでんツンツン男」さんは、その絶妙にまぬけな名前と、なぜそんなにもツンツンしたかったのか分からない謎めきなどで一世を風靡したが、現在のあらたな星たちは「迷惑行為」という言葉で語られるに留まっている。テレビに出ている大人たちは険しい顔つきでその行為を非難し、私はそれを見ながらどこか白けた気持ちで「お前らもっと悪いことしてるんちゃうの」と思ってしまう。別に根拠はない。

インターネット上では新たな迷惑行為動画が発掘されるとあっというまに拡散され、動画に映し出される未熟そうな少年ないし青年たちの名前や学校名や住所が特定されていく。実際の警察庁には秩序があるテイだが、ネット警察庁はあからさまに無秩序だ。名刺を持たない捜査官たちは何でもありとばかりに動画投稿者たちを糾弾し追い詰め、彼らの過ちや身元はネット上に後世永久に刻まれ、実家や学校への終わりのない攻撃が始まる。

迷惑行為そのものを庇おうとは思わないが、時々私は、彼らが本来されるべき以上の裁きを受けすぎている気がしてならない。罪は罰をもって裁かれて当然だ。しかし彼らが仮に損害賠償額を支払ったとてネット上の罰は止まないだろう。罰を与える権利は誰が持つのか。必要以上に罰を与えることは、何の罪でもないのだろうか。

もはや取り返しのつかない悪ふざけをする若者。清廉潔白なふりをして険しい顔でそれらしいことを言う大人たち。とことん煽るネットメディア。銃器のような正義を振り回すネット警察庁の皆さん。罪を犯しているのは、たった一人だろうか。

唯一救いなのは、「おでんツンツン男」さんが同名でYouTubeを始めたというそのたくましい根性かもしれない。見上げた根性だ。ちなみに奥様のことは「ツン嫁」というらしい。仲睦まじそうで何よりである。

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