日吉〈元祖ニュータンタンメン本舗 仲ノ谷店〉
“タンタンメン”のそばで肉を焼く。
お昼時、一人客の「タンタンメン中辛と、カルビね」という注文は、この店の日常。
ここは、川崎の名焼肉店〈北京〉で修業した先代が開いた店。近所で営業する本家に遠慮して〈北京〉を名乗らず、チェーン店〈元祖ニュータンタンメン本舗〉に加盟する形で創業。焼肉と麺の店が出来上がった。
今や川崎の人々にとってタンタンメンといえばこの味。練りゴマは使わず、豚ガラ塩味のスープにたっぷりのニンニク、挽き肉、卵を絡めた旨味を感じる一杯だ。麺をすすり、片手でロースターの上の焼肉を世話する。軟らかくタレの染み込んだカルビや臭みのないホルモンに、焼肉店としての実力を感じられるだろう。手作りのタレは甘辛くホッとする味わいだ。
人形町〈Manzovino(マンツォヴィーノ)〉
イタリア料理人のひらめきが光る。
人形町のイタリアンレストラン〈オステリア ブッビーノ〉のオーナーシェフ日髙哲博さんが、その叡智を結集して焼肉店を開店。これまで扱ってこなかった和牛と向き合い、イタリアンシェフならではのアレンジを施している。
和牛は産地や銘柄にこだわらず、日髙さんが市場で選んだ良い肉が店に並ぶ。下味にはコンソメとシチリアの塩を使った塩ダレ、ソースにはレモンを効かせたエシャロットソースなど、ほかでは味わえない味つけ。卵黄と合わせることが多い上ロースには、細く薄く削ったトリュフで芳醇な香りを添える。
「ハラミアータ」「タンジェノヴァ」などシャレの効いたメニューも、焼肉好きの日髙さんがパッと思いついて形にし、店に根強いファンをつけた逸品だ。
参宮橋〈すっごい焼肉 参宮橋店〉
北海道の母の味と新鮮なアレンジ。
店主はプロゴルファーの久保超路氏。母が札幌で40年営む焼肉店〈BULL TOKYO〉の味を継ぎ、さらに独自の変化球メニューを生み出してきた。店内の壁を埋め尽くすサインの数々は、スポーツ選手や芸能界からのリピーター。それだけでなく、近隣のファミリー層からも人気を集めている。
茨城や群馬から仕入れる生肉は、どんなに忙しくても、ランチ営業でさえ、注文後にカット。タレでもむのは数十秒にとどめ、肉の旨さを際立たせる。つけダレ不要のおいしさだ。鮮度の良い肉を使うから、ミノの湯引きや生タンもメニューに上がる。濃く甘いタレを使ったジンギスカンやホルモンなど、北海道直送のメニューも久保さんだからこそ。
池尻大橋〈焼肉ケニヤ〉
スパイス香る異色店は確かな実力派。
2階への急階段も懐かしい古民家の店内には、往年の映画ポスターが貼られていたり、70年代のポップミュージックがかかっていたり。麻布十番で人気の“東京スタイル”料理店〈酒肆ガランス〉の系列と聞けば、食通は納得だろう。
〈ミート矢澤〉で仕入れるA5ランクの牛肉はシンプルな味つけで提供するが、そのほかはスパイスとハーブでアレンジ。このスパイス焼肉が店の色。クミンやコリアンダーなど10種ほどをブレンドしたチュニジアのスパイス“ラスエルハヌート”や、オリジナルスパイスなどを効かせる。
そこへ、赤唐辛子のペーストを使ったピカンテソースなどをつけて味変も。ヨーグルトミントキャベツとピタパンを追加注文し、羊肉をサンドするのも一興。