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完璧な演奏と人間らしい偶発性の共存。シンガーソングライター・長谷川白紙が語るジャズ

今、ミュージシャンが一番夢中な音楽、それはジャズかもしれない。ロック、ヒップホップ、R&B……音楽家は、その魅力をどう捉えているのだろうか。シンガーソングライター・長谷川白紙におすすめの3枚とともに大いに語ってもらった。

photo: Wakana Baba / text: Shunsuke Kamigaito

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完璧な演奏と人間らしい偶発性の共存

大人っぽくてかっこいいという安直なイメージでジャズを聴き始めましたが、その挑戦的な姿勢に魅了されて高校時代は〈disk union〉の新宿ジャズ館に入り浸るようになりました。ジャズを聴いていると、プレーヤーの体が全体の時間軸を繋ぎ留めているように感じるんです。

だからこそ一曲の中でスタイルの異なる演奏をしても違和感なく成立する。この点は、デジタルで整えた音と鍵盤で弾いた音をつぎはぎして制作する私の音楽にも影響を与えています。完璧な演奏の中に、人間らしい偶発的な揺れが起こる瞬間があるんです。その共存がジャズの面白さだと思います。

長谷川白紙が選ぶ、おすすめの3枚

Q1:オールタイムベストは?

『A Saga Da Travessia』Letieres Leite & Orkestra Rumpilezz

ブラジルの音楽を聴いていると、オーソドックスな流れから少し外れる瞬間があるんです。それを最初に感じたのがこのアルバムに出会った時。ルールがないようにすら思われる和声法やコード進行の考え方に衝撃を受けました。無秩序の中を縫うような動きなのに、ジャズとして成立しているところが魅力です。

Q2:昨年一番聴いたのは?

『Animals』Kassa Overall

実験性の高いジャズとヒップホップが絶妙なバランスで融合した一枚。ジャズドラマーのカッサは新しい時代のプロデューサーであると同時に、ジャズの歴史に対してもブレない敬意を持っている。そのブレない姿勢と、既存の枠組みを破壊したいという思いがギリギリのところでせめぎ合っているのを感じます。

Q3:これからジャズを聴く人へのおすすめは?

『Tea Times』大西順子

全体としても素晴らしいのですが、特に「The Intersection」を聴いてほしいです。これは途中からBPMが変わってドラムンベース的になり、長いソロと激しいビートチェンジを経てビッグバンドスタイルに回帰するという構成で。ジャズが定型を破壊しながら進化してきた音楽だということを教えてくれます。

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