シベリウス 交響曲第2番 ニ長調 作品43
ここにある6枚のレコードはみんな優れた演奏で、どれを手にとってもがっかりすることはない。でも「個人的な好き嫌いだけでもいいから、どれか1枚だけ選んでくれ」と言われたら、僕はバーンスタイン/NYフィルの盤を選ぶかもしれない。
古い録音だが、そのきりっと引き締まった音楽の佇まいは、聴くものの姿勢をまっすぐ正してくれるような気がする。バーンスタインは後にウィーン・フィルと組んでこの曲を演奏しており、それも優れた演奏だが、「ちょっと作りすぎかも」というところがあり、この若き日の溌剌とした音楽世界を僕はより高く評価したい。
フィンランド出身の青年オッコ・カムの指揮するベルリン・フィル、これが彼のデビュー盤だった。若々しいシベリウスだ。フィンランドの湖を渡ってくる風が頬をそっと撫でるような自然な感覚がここにはある。ベルリン・フィルも若き指揮者を熱っぽく盛り上げる。
カラヤンの指揮するフィルハーモニア。カラヤンらしくツボを心得た演奏で、歌うべきところはしっかりと歌い上げ、抑えるべきところはきちんと抑える。細かいところまで目配りがきいている。録音がちょっと古っぽいかな、というところくらいしか欠点が見当たらない。
そういういかにもカラヤンらしい念の入れ方が気に入らん、という人も中にはいるかもしれないが。
マゼールの演奏は、それが聴き手に「自由さ」を感じさせるかどうかで値打ちが決まってくる。僕の個人的な意見は「マゼールは少し格落ちのオーケストラを指揮したときの方が面白い」というものだ。たぶんそういう楽団の方が勝手がきくのだろう。その文脈で言えば、ウィーン・フィルと組んだ演奏はいくぶん不自由かも……もちろん水準を軽くクリアした優れた演奏ではあるんだけど。
コリン・デイヴィスは時として音楽をドラマチックに盛り上げすぎる傾向があるが、少なくともシベリウスに関しては、彼のそのような演奏スタイルは決して場違いではない。シベリウスの音楽のひとつのあり方だと思う。でも僕の個人的好みからすると、やっぱりちょっと盛り上がりすぎているかも。
渡辺暁雄指揮の日フィルの演奏は、一言でいえばとても品が良い演奏だ。素直というか、あざとさみたいなものが見当たらない。そのへんがカラヤンやデイヴィスやマゼールの演奏とはずいぶん違っている。鰹出汁で料理したシベリウス……これはあくまで褒め言葉。聴かせどころをきちんと持った、立派な演奏だと思う。
スペースがなくて写真を載せられなかったけど、ジョン・バルビローリがロイヤル・フィルを指揮した盤(Reader's Digest box)も聴き応えのある演奏だった。