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ゲームカセットのような音楽メディア。8トラックの面白さをミュージシャン・原田晃行が語る

2人組ユニットHi, how are you?のギター、ボーカルとして活動するミュージシャンの原田晃行。独自のセンスで集められた中古CDやカセット、LP、古書や小物のコレクションを、日々SNSで公開している。今回は、彼が今一番惹かれているという8トラックテープとの出合いや魅力、そして彼の音楽ソフトへのこだわりを語ってもらった。

text: Akiyuki Harada

中古品に感じる妙な落ち着き

物心ついたときから中古品に惹かれてきました。

底抜けしないよう折り曲げたチラシが敷いてあるLPジャケット。黄ばんだスリーブだけに保護されたEP盤。帯がラミネート加工されプラケースと一体化したレンタル落ちのCD。

新品よりも他人の手元にあった形跡を感じられるモノに妙な落ち着きを覚えます。

ブランキー・ジェット・シティのインタビュー集『ワイルドウィンター』を古本で買ったとき、表紙をめくったページに、干からびた四つ葉のクローバーがセロハンテープで貼ってあるのを見つけました。前の持ち主が貼ったものでしょう。モノとモノが結びつくと、新たな何かが生まれることを強く実感した出来事です。

『ワイルドウィンター』に貼ってあった四つ葉のクローバー。

8トラックとの出合い

中古品を買っていると様々な記録媒体と再生機器に出合います。

数年前いいラジカセがないか探しているとき、カセットテープと8トラックのプレイヤーが合併した一品を見つけ購入しました。

8トラック(通称8トラ)とは、ゲームカセット(しいて言うなら親機はメガドライブでしょうか? タカラトミーのおやすみホームシアターも彷彿させます)を縦長にしたような手のひら大の磁気テープで、もともとカーオーディオを想定用途に開発されたそうです。

日本ではカラオケ装置での音楽再生や、バスの車内放送など業務用に多く用いられたのだとか。

ベースの奥にあるのが、筆者の8トラックプレイヤー。

8トラの魅力は大きく2つあると思います。

まず、一枚のアルバムが必然的に4分割されてしまうことです(8トラックカートリッジの構造についてはなかなか説明が難しいので、ぜひネットで調べてみてください)。LPであれば2枚組でもない限りそんな事態には陥らないと思います。

性質上、無理やり“田”の字に区切られたその箱から、音源制作者の意図を超えた(無視した?)強引な妙味を感じます。

ルー・リード『Rock And Roll Heart』の8トラ。収録曲が4パートに分かれて記載されている。

もうひとつ、これは私が特に8トラックを好きな理由。

ずばり、見た目です。LEGOブロックのような発色のカートリッジに、ペライチのジャケが貼られている8トラ。音楽の記録媒体は見て触って楽しめるという点も重要だと思います(余談ですが、スティーヴィー・ワンダーの何枚かのLPに、点字のエンボス加工が施されていることを気づいたときには心底感動しました)。

厚揚げほどのプラスチックにざらばん紙がくっついた直方体。その造形と肌触りにはMD世代の自分に突き刺さる何かが宿っています。

MDにも似ている感覚

15年前、TSUTAYAでCDアルバムをレンタルしては、様々な色のミニディスクにダビングを繰り返していました。そのアルバムに似合う色を見立てて録音するのです。

ザ・ストーン・ローゼズの1stであれば、ポロックにインスパイアされたジャケットの緑色と迷いつつも、檸檬の印象から黄色いMDに。ティーンエイジ・ファンクラブの『バンドワゴネスク』はやっぱりピンク色のMDに。

ノイ!の1stは白地にピンク色の、タヒチ80はクリアな水色の、XTCの『BLACK SEA』は深い青色の……と、今それらのアルバムを異なる媒体で聴いても、当時ダビングしたMDの姿がふっと浮かんでしまうのです。インデックスシールに書かれた汚い字も(適当な空MDにダビングしたアルバムもその色の印象がついたりして。サニーデイ・サービスの『MUGEN』は自分の中でペパーミントグリーンなんです。倒錯した共感覚?)。

あの当時の自分の見立てを、さらに昔に確かに行われていたであろう8トラックの制作会議と、勝手に重ね合わせて楽しんでいます。

私が持っている8トラの中で特に気に入っているのはザ・フーの『The Who By Numbers』です。ジョン・エントウィッスルが描いた点を順番に繋いでいく絵が、絶妙なクリーム色のカートリッジとよくマッチしています。

ハロウィーンがテーマの効果音をまとめた『Goofy Gold / Horror - Sounds Of Terror』も好きな一本です。盤石な黒ボディにPOPな題字が映えます。これがもし赤ボディだったら……なんて想像するのもまた一興です。

ややミスマッチなフィフス・アヴェニュー・バンドの1stもこれはこれで味わい深いし、ルー・リードの『Rock And Roll Heart』は真っ赤な紙ケース込みでいい感じです。

あらゆる媒体を自宅で再生できる状態にしたい

したり顔で書き連ねてきましたが、「8トラックのことはまだよくわかっていない……」のが正直なところです。先日、北関東の某レコード店に初めて行ったとき、大量の8トラが詰まった棚があり、店主さんに8トラにまつわる云々を教えてもらいました。

ゴムが劣化しやすく維持が難しいこと、1980年代後半までなら意外なタイトルもあること、そして8トラよりもDATのほうが高音質でおすすめだ、ということ。

その助言を聞いて、ある車好きの音楽家がDAT搭載のカーオーディオにこだわっていたことを思い出しました。発売前の録り音を運転しながら確認していたそうです。その方の車にまつわるコンピを2倍速でMDに落とし、嬉々として聴いていたのですから私の耳は信用なりません。

そもそも8トラのプレイヤーを買ったのは、あらゆる媒体を自宅で再生できる状態にしたい、という欲求からでした。レーザーディスク、SP盤、オープンリールもなんとか再生できる状況にあります。次はDATかな……と密かに意気込んでいる今日この頃です。

さて、この文章を打ちつつヤフオクという名の池に片足を突っ込んでちゃぷちゃぷしていたら、ハットを被った虚ろな鯉の8トラが、私に手を振ってきました。なかなか値の張るこの恋がトラウマにならなければよいのですが……。

キャプテン・ビーフハートの『Trout Mask Replica』の8トラ。ウォッチリストには25人のマークが。