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鉱物フリークが足繁く通うショップ、ハンズ名古屋の珍奇鉱物店〈地球研究室〉

世界中の鉱物フリークらが足繁く通うショップがあるなら、きっと知る人ぞ知る穴場に違いない……と思ってリサーチをしていくと、まさかの全国チェーン〈東急ハンズ〉と知って、目を丸くした!

初出:BRUTUS No.963「珍奇鉱物」(2022年6月1日発売)

photo: Keisuke Fukamizu, Shu Yamamoto(mineral) / text: Toromatsu

ハンズ名古屋店 地球研究室

仮にこんな店があるとしたらどうだろう。そこには目利きが選りすぐったレアミネラルがあり、すべてが相場より圧倒的にリーズナブル。加えて駅直結で行けちゃう好立地。しかもしかも、いつ行っても品揃えがフレッシュ。目の肥えたコレクターだろうとつい足を運んでしまうはず!前置きが長くなってしまったが、実際に“そんな店”があるから、知らない人は是が非でも訪れてほしいという話。

JR名古屋駅と繋がる〈ジェイアール名古屋タカシマヤ〉の5階から11階にある〈ハンズ名古屋店〉。正確にはその10階の「地球研究室」というコーナーこそが“そんな店”で、ここには物理学・生物学・地学・化学・考古学にまつわるサイエンスグッズが揃い、特に鉱物のラインナップは目を見張るものがある。

東急ハンズ名古屋店 地球研究室
店に並ぶすべての鉱物に、その魅力を端的に書いた塩野さんの自作ポップが用意されている。

実は〈ハンズ名古屋店〉はフランチャイズ店舗で、かつての仕入れ形態を継承した独自の商品展開が色濃いのが特徴。「地球研究室」も、長くバイヤーを務める塩野正鎮さんがいてこそのコーナーゆえ、全国でも名古屋店にしか設けられていない。

「僕の若い頃は、ハンズが新しい発見の扉を開いてくれた。ここはそういう入門店のような場所でありたいんです。普段なかなか目にしない鉱物でも、ハンズ内なら誰でも気軽に見られる。初心者でも見て、楽しめて、買えるのが理想。だから子供もわかりやすいよう、鉱物の一つ一つに必ずポップを付け、お小遣いで買えるモノも置いている」

東急ハンズ名古屋店 地球研究室
鉱物のイロハがわかる標本や、工具も豊富に揃うあたりはさすがハンズ。

出し惜しみなく並んでいる常時見られる、買える博物館

ビギナーフレンドリーな精神でも侮るなかれ。塩野さんは20年も前から鉱物の取り扱いを始め、米・アリゾナ州で開催される世界最大の原石・化石展『ツーソン・ショー』に2007年から毎年出向き、ほかにもコロラド州など長年現地で買い付けしてきた専門家。

化石、隕石、紀元前のローマのコイン
化石や隕石、紀元前のローマのコイン(!)など、“こんなのが買えるの?”と思うようなものがたくさんある!
東急ハンズ名古屋店 地球研究室にある恐竜の化石
鉱物ついでに化石もどう?

好きな人なら喉から手が出るほど欲しくなる鉱物も、当然ほかより多くストックする。“店頭はいつも新鮮にしておきたい”という思いで、数百円で買える天然石や、時には数百万円のレアミネラルまで、常備300~400種類の鉱物が循環し並ぶのだからマニアがつい訪れたくなるのも頷ける。

さて、そんな玄人も素人も魅了してきた塩野さん。いったいどんなすごいコレクターなのか探りを入れると、なんと“自身は鉱物を一つも所有していない”と驚きの回答が!

「売り手がコレクターなら、きっと一番良いモノは店頭に出さず自分のものにしちゃっていると思うんですよね。ここが僕のコレクションルームだと思っています!たまに店頭に出してすぐ買い手がついてしまった時は“売約済みにするからもうちょっとここに置かせて”って言っちゃいますけど、それはご愛嬌(笑)」

博士だけどコレクターではない。だからこそ売る気がない価格にはならない。良い品が安いのも納得だ!

東急ハンズ名古屋店 地球研究室
「知的好奇心をくすぐるグッズを世界中から集める」をスローガンに、幅広いミネラルが並ぶ。

編集部がハンズでディグした鉱物たち

取材もきちんとしながら、抜かりなくミネラルハントもしてきました。見つけたのはこの4つ。米・スイートホーム鉱山のロードクロサイト以外は、アンダー1万円!「いいチョイス」と塩野さん。

ロードロクサイト
ロードロクサイトの説明ポップ
アズライト
アズライトの説明ポップ
グリーンアポフィライト
グリーンアポフィライトの説明ポップ
フローライト
フローライトの説明ポップ