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白馬の山を走って、滑って。グリーンシーズンも天国でした

白馬の雪山を滑る友人たちが言うには、みんなグリーンシーズンも変わらず山を滑って遊んでいるらしい。

photo: Moe Kurita / text: Takuro Watanabe

それにしても、ダウンヒル用のバイクってかっこいい

白馬の山々
白馬岩岳マウンテンリゾートのゴンドラ山頂駅からダウンヒルコースは始まる。
白馬岩岳マウンテンリゾート HP:https://iwatake-mountain-resort.com

「白馬はグリーンシーズンも最高なんだよ」とは何人もの口から聞いていた。雪のシーズンにはここはホントに日本なのか?と思うぐらい各国から訪れるスキーヤー、スノーボーダーで賑わう白馬。世界が認めるウインターリゾート“HAKUBA”は5月〜11月くらいのグリーンシーズンもどうやら最高らしい。

当然、ローカルたちがおとなしくしているわけもなく、彼らは緑の山を疾走しているという。これはフリーマガジン『SKI CLUB』の編集者であり、スキーヤーを自称している自分としては行かなくてはならない。

白馬岩岳マウンテンリゾートに来てみると、ヘルメットとプロテクターを装着したMTBライダーたちがたくさんいる。「え、あんなにゴツいプロテクターを付けるということは、それだけ危ないということか」と一瞬緊張したけれど、それ以上にワクワクしている。

スキーもそうだけど、アクションスポーツはスリルがあるからこそ楽しいのだ。それにしてもダウンヒル用のバイクってかっこいいな。

走り出せばどうにかなる、はず

レンタルショップ〈SPICY〉でフルサスペンションバイクとプロテクター一式をレンタルしたら、ダウンヒルバイクならではの乗り方やブレーキワークなどのレクチャーを受け、ゴンドラで山頂駅に向かう。

スキーやスノーボードを始めたばかりの人から「友達に頂上まで無理やり連れて行かれたけど、転がりながらどうにか滑れるようになったよ」というエピソードをよく聞くけど「これが忘れていたあの気持ちだな」と眼下に広がる山の斜面を見ながら考える。走り出せばどうにかなるに違いない(と信じよう)。

山頂駅に着くと、白馬岩岳マウンテンリゾートの牧村遼さんが待っていてくれた。普段はガイドサービスではなくコース整備に携わっている牧村さんが案内役を引き受けてくれたのだ。

ゴンドラ山頂駅を起点にしてダウンヒルコースは、初級〜中級のアルプスダウンヒルコースと上級のカミカゼダウンヒルコースの2つが用意されている。僕らは当然アルプスダウンヒルコース。牧村さんについて走り出す。

スピードを出すほどに強くなる風が爽快だ。目の前にはずっと山の風景が広がり、バイクを通して感じられる地形の起伏の感触。あれ?なんだこれは?走り初めからもう楽しいじゃないか。

スキー場を整備して造られたコースには直線もあれば、無数のバンクも用意されている。このバンクでのコーナーリングの感覚がたまらないのだ。初めのうちは手で曲がろうとしてしまうのだが、教わった通りに体を倒してうまく曲がれたときの加速感がたまらない。

「スキー、スノーボードと一緒で、地形で遊ぶ感覚ですね。ハイパフォーマンスなギアを使って山を駆け抜ける疾走感をぜひ楽しんでほしいです」という牧村さん。本気のライディングを見せてもらいたいとお願いすると、そのスピードに驚いた。バンクの侵入速度とバイクが倒れ込む角度に絶句。まいりました。自分がやっていたのは“なんちゃってコーナーリング”だったことを思い知らされてしまった。

でも、自分なりの限界までスピードを出して、次々に現れるバンクをグーンとクリアしていくと、もうアドレナリンなのかドーパミンなのかよくわからないけれど、何かが開いて分泌されているのがよくわかる。

緊張しているせいもあって体に力が入るので、気がつくと結構な疲労感。これまで走ってきたコースを見上げてみるとだいぶ走った様子。

「もうけっこう来ましたよね?」と聞くと「まだ4分の1くらいですよ〜。全長7キロくらいありますから」と牧村さん。半分くらい走ったかな?と思っていたので正直だいぶ驚いた。岩岳マウンテン、想像以上のサイズ!

ここはダウンヒルの聖地というか、天国?

ダウンヒルを楽しむスケーター
白馬の山をバックに長〜いダウンヒルを楽しむ。

マウンテンバイクを降りてからも、白馬のダウンヒルはまだまだ続く。次はスケボーに乗り換える。この「松川」と呼ばれるスポット。その名の通り、白馬連山から流れる松川沿いにある舗装道路なのだが、ここがダウンヒルの聖地として知られるスポットなのだ。

スケボーでのダウンヒルにちょうどいい斜度と道路の幅、そして路面コンディション。それが延々と2キロほども続くのだからたまらない。しかも、滑っている間はずっと白馬の美しい山を眺めながら滑ることができるのだから、聖地というか天国?スケボーのダウンヒルスポットでこんなに完璧なところは他には見当たらない。

どこまでも続く坂道
ズドーンと坂道が続くこのロケーション!日々、スケーターやランナーなどが集まる。

松川のダウンヒルには様々なスタイルのスケーターが集まってくる。ロンスケで疾走するもいいし、ハードウィールで攻めるのもいい。でも、個人的なおすすめはサーフスケート系のボード。斜度と道幅の条件などが適しているのだ。

一緒に滑ってくれたプロスノーボーダーの藤田一茂さんはサーフスケートブランド〈YOW〉のアンバサダーでもある。同じスケボーに乗っているとは思えないくらい、異次元の滑りを見せてくれた藤田さんは数年前から白馬村に移り住んだ。もちろんスノーボードのため。

「僕の好みの山の雰囲気なんです。北海道や東北の山もやさしい印象でいいですけど、白馬の山々は険しく急峻で、何よりも美しいですね」

スケートボード
スペイン発のサーフスケートブランド〈YOW〉。

もう一人、一緒に滑ってくれたスキーヤーの大野結さんは生まれも育ちも白馬村のローカル。

白馬エリアを中心にしてフリーライドの世界大会などにも出場するスキーヤーの彼女はスノーボードもするしクライミングもするし、マウンテンバイクやスケボーにも乗る。山と共に生きる女性なのだ。

「険しい山のすぐ近くに人の暮らしがあるということが、白馬村を特別な存在にしているのだと思います。登山やスキーをしない人にとっても、白馬の人にとって山はいつでも身近な存在なんです。そして、山遊びのカルチャーは先人たちからずっと受け継がれているんです」

白馬村のマウンテンカルチャーは、脈々と大切に受け継がれているというわけだ。

白馬村在住のプロスノーボーダー藤田一茂さんと白馬生まれ白馬育ちのローカルスキーヤー大野結さん。
白馬村在住のプロスノーボーダー藤田一茂さん(Instagram:@forestlogd)白馬生まれ白馬育ちのローカルスキーヤー大野結さん(Instagram:@yuipuep)。