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東京の東西にできたグローサリー&カフェ。〈ファームマート アンド フレンズ〉と〈マークト〉立役者2人が対談

2021年夏、東京の東は本所に登場し、2022年3月にカフェを増設した〈Marked〉と、同時期に西は代々木にオープンした〈FarmMart & Friends〉。開業した2軒のグローサリー&カフェは、共にご近所に根づく食料品店、コミュニティにおけるハブとしての存在を模索している。それぞれの立役者である真鍋太一さん(FarmMart & Friends)と、石渡康嗣さん(Marked)による対談。初対面ということで、まずは互いの自己紹介からスタート。

photo: Satoko Imazu / text: Chisa Nishinoiri

作り、選び、届ける、地域に根ざした店作りの秘密

真鍋太一

僕は徳島県神山町の地方創生に取り組む農業の会社で「フードハブ・プロジェクト」に携わっていて、神山に移住して9年目です。在籍している〈モノサス〉というウェブ制作会社が始めた取り組みです。

食のイベントで10年ほど前に野村友里さんと出会い、そこから料理人たちのサポートや野村さんのプロジェクト〈ノマディックキッチン〉の支配人を務めたりして今に至ります。石渡さんはずっと飲食業界ですか?

石渡康嗣

個人的においしいものを食べるのは大好きですが、仕事はどちらかといえば場作りです。飲食関係の企業に勤めてプロデュース業などを学んで、2013年に独立。

その後〈ブルーボトルコーヒー〉や〈ダンデライオン・チョコレート〉の日本展開のプロデュースに携わったり、カフェの運営などを粛々と。公共施設やパブリックスペースなど、行政からカフェ運営の依頼を受けることも多く、今は19店を手がけています。

真鍋

僕は去年銀座ソニーパークに、神山で運営している〈かまパン&ストア〉のポップアップショップを出店して、初めて東京での店作りを学びました。神山で農業やパン屋などの飲食に携わっていると、作り手の目線に寄りすぎるというか。

「無農薬ですごくおいしいからぜひ食べてよ」と、少々押しつけすぎたというか、説教くさくなってしまったところがあって。食べる側との接点が弱かったかな、と反省点も多い。

銀座の店が期間限定だったので、〈モノサス〉のオフィスの隣に〈FarmMart & Friends〉をオープンしました。代々木の食を充実させるための場所かつ、社員食堂の機能も。

石渡

自分たちは生産者さんの顔が見えているので、あの人が作っている大根なんだから間違いなくおいしい!と、味覚以上の情報が立ち上がり、本質的なおいしさも味わうことができる。でも現場で売っているスタッフはそこから少し距離があるので、現場でお客様に語れる言葉も少なくなります。

それなら実際に自分たちもモノを作らないと、もの作りの気持ちはわからない。と思い、初めて、パンとアイスクリームの製造を始めたんです。売るだけでなく、自分たちも作ることに携わり、大変さを実感することが〈Marked〉の大事な部分でもあると思っています。

パンは〈パーラー江古田〉の原田浩次さんのレシピ協力で。、教えも請いながら、作ることと売ることの関係を日々学んでいます。

真鍋

僕も銀座での教訓を踏まえて、ここはもの作りの場にすると決めていました。だからジャムもドーナツも店で製造しています。野村さんのアドバイスで、ジャム入りの超やわドーナツは、〈かまパン〉の超やわ食パンの生地で作っています。

もの作りの場を真ん中に据えると、ITの仕事に携わっているスタッフも身体性を日々感じることができる大切な場所になります。僕らは当たり前だと思ってやっていますが、お客さんが来た時に「ここで作っているんですか?」と結構驚かれます。

町と人がつながる場作り

石渡

うちではよく「思いやり」というキーワードを使います。農家さん、生産者さん、相手に対する共感力をちゃんと持ちなさい、ということ。最近は本当に無関心な人が多いと感じます。

例えばゴミが落ちていても気にならない。それを拾いなさいというのは簡単なんだけど、これに関心を持たせるためにはどうしたらいいだろうって、結構悩むんです。でもそれは、もはや社会の問題だなって思います。

店で商品を扱ったり、買うことによって少しでも相手への思いやりや共感力を掴むきっかけになってくれたら嬉しいですね。

自分たちでモノを作り、スタッフとお客さんがコミュニケーションを通じて、ああ喜んでもらえてよかった、この店が町にあってよかった、と言ってもらえるような循環ができるといいなと思ってます。

真鍋

関心、大事ですよね。〈FarmMart & Friends〉は、「地元の人たちのために何をする?」という思いを体現する場でもあります。代々木3丁目の町内に住む人たちの食をどう充実させるか。

それに、災害などが起こって困った時にも、食を通じて助け合えることって結構あると思うんです。関係作りは、日々の挨拶から始まります。うちの会社はこの住宅街にオフィスを構えて10年以上経つんです。が、オフィスって本当に在るだけで、近所の人と関わるポイントがないので、これまで挨拶を交わすことなんて一度もなかったんです。

でもお店を作ってる時から、ここ何屋さんになるんですか?と話しかけてもらったり、挨拶をするきっかけができたんです。

10年以上ここにいて、ようやく代々木に接続できた感じがします。このあたりには外国の人も多くて、長く住んでいるという近所の人に、“welcome to our neighborhood”って言われたんです。いやぁ、うちも結構長いこといるんだけどなぁと思いつつ(笑)。現場の子たちはすごく嬉しかったと思います。

FarmMart&Friends

Marked