nôl（馬喰町）
過不足なく、心身が満ちるクリーンな料理を。
無彩色で統一されたダイニングから見渡せるオープンキッチン。腕を振るうシェフの野田達也さんは「多くの人にダイレクトに喜んでもらえる仕事をしたい」とロボット製造の会社勤めから一転、料理の世界へ。
地元・福岡の調理師学校を経て移り住んだ東京では、古賀義英シェフの下でクラシックなフランス料理の技術を培った。その後渡仏し、パリでは、日本人初の2ツ星を獲得した〈Passage53〉佐藤伸一シェフに師事。個性を、自由に皿に映し出すことの大切さを学んだ。
「畑を食べる」イチジクの葉に包んで焼いたナスからは、甘い香りが。祖母と過ごした畑の思い出から生まれた、店を代表する一皿だ。傍らには、発酵のニュアンスをプラスする自家製ぬか漬けのサルサと唐辛子の泡。ぬか床は、故郷のぬか床専門店のものと実家のぬか床をブレンド。料理はすべてコース¥13,200（12品）から。 
「ブラン（白）」ほぼ白一色で統一された冷菜は、ゆでてから冷水で締めた食感の良い白ミル貝と、昆布締めにしたカブに貝のだしがベースのスープを合わせて。幼少時におやつに食べていた「炒ったお米」を加え、香ばしい香りをプラス。 
「ひげ付きヤングコーンとオッソ・イラティ」ひげを付けたまま薄切りにしたヤングコーンのグリルに添えたのは、バスクの羊乳チーズ「オッソ・イラティ」で作ったサバイヨンソースとモリーユ茸。ブルゴーニュワインを蒸留したブランデー「フィーヌ」が香る。
これらの経験から生まれるのは、各地の生産者から届く優れた素材と自身の食にまつわる記憶とを紡ぐ料理。特に野菜への思い入れは強く、茎から葉まで食材や香りづけに多用し、シロップからぬか漬けまで調味料は自家製とこだわる。食後には、野菜の端材で取るコンソメを。「体の負担にならない心地よい食後感を」という気遣いが、コース全体に貫かれている。
