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グルマン温故知新:高田馬場〈手打蕎麦 nobu〉蕎麦に惚れ込み、蕎麦屋に転身した博士の蕎麦

テーマごとにレストランを紹介するブルータスの人気連載。今回のテーマは「名店出身の蕎麦と天ぷら」。爽やかな風が吹く気持ちのいい季節が早く訪れてほしい、と誰もが願う今日この頃。少しでも秋の気配を感じたら、日本酒で乾杯したい?いや、ワイン気分?気の利いた酒肴で、あるいは天ぷらで気分よく飲んで、香(かぐわ)しい蕎麦で締める。実にいい流れではないか。

photo: Yoichiro Kikuchi / text: Michiko Watanabe

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手打蕎麦 nobu(高田馬場)

蕎麦に惚れ込み、蕎麦屋に転身した博士の蕎麦

店主・藤井信勝さんは、あえて裏通りの目立たない場所を選んで店を構えた。木の葉が風に揺れてこすれ合う音が聞こえるような静かな場所で、お客様に蕎麦に向き合ってほしいと考えたからだ。

店主のバックグラウンドがユニークだ。バイオの研究で博士号を取得。製薬会社に勤務し、在宅医療に携わっていたが、あるとき、巣鴨の名店〈手打そば菊谷〉で「唎き蕎麦」を食べて衝撃を受けた。蕎麦の味わいや香りの違いに触れ、その底知れぬ魅力に惚れ込む。

一大決心をして弟子に入り、7年後独立。無事に店を構えた。といっても、現在も非常勤で勤め人を続けるダブルワーカーゆえ、店を開けるのは土日のみだ。

蕎麦には禅の精神が宿る。呼吸を整え、心静かに蕎麦を手繰れば、それは禅なり、と店主。蕎麦前には、ひとクセある日本酒と手頃なつまみが揃う。秋深い週末のひととき、しっとりと蕎麦を味わいたい。

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