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「舞台でしか味わえない喜びがある」森田 剛が初の赤堀作品『台風23号』に挑む

作品ごとに強烈な存在感を放つ俳優の森田剛さん。2024年10月には舞台『台風23号』で、愚かで憎めない市井の人を描く演劇界の名手、赤堀雅秋作・演出の作品に挑む。赤堀作品の魅力や俳優という仕事について聞いた。

photo: Takao Iwasawa / styling: So Matsukawa / hair&make: TAKAI / text: Tomoko Kurose

非効率だからこそ、味わえる喜びがある

作品ごとに強烈な存在感を放つ俳優の森田剛さん。10月には舞台『台風23号』に出演する。「稽古は好きです。人物や関係性が次第に立体的になっていくところが面白い」。稽古での負荷はあえて感じていたいのだそうだ。

「世の中、どんどん効率的になっています。でも、舞台作りは全然違う。わかっているつもりが実は理解していなかったと気づいたり、進みかけてまた戻って方向性を見直したりという面倒な作業がある。手間がかかるからこそ、舞台でしか味わえない喜びが僕はある気がしています」

俳優・森田 剛

ダメな人を演じるのは楽しい

数々の舞台に出演してきた森田剛さんが『台風23号』で、ついに赤堀雅秋さん作・演出の作品に挑む。

「昔、荒川良々さんに、きっと好きだと思う、合うんじゃないかな?みたいなことを言っていただいて、それから赤堀さんの作品を観に行くようになりました」

この取材の時点ではまだ台本はできておらず、プロットによると今回、森田さんは蒲鉾工場で働くバツイチの男性役になるらしい。

「間宮(祥太朗)くん演じる義弟から2万円借りていて、浮気をしていて、また別の女性にもちょっかいを出すような男みたいです。わかりやすいダメな人を演じるのって実は楽しいんです(笑)」赤堀作品の魅力については、「人間くささ」が表れているところだと言う。

「どれだけ酷いことをしていても、出てくる人たちがみんなどこかチャーミングなんです。ダメな人って、周りからは理解されないけれど、本人の言動には本人なりの筋が通っている。その理由を見つけるのも楽しいし、説得力のあるダメな人を演じられたらいいですね」

俳優としては、演出家の思い描くイメージを体現したい。同時に、そのイメージを超えたいとも思っている。

「“(演出家に)こうしてほしい”と言われるのは一つのルールのようなもので、そのなかで自分を解放する楽しみがあります。縛りがあるからこそ、自分に落とし込む作業が面白くなるんですよね」

訥々(とつとつ)と話しながらも舞台愛がひしひしと伝わってくる。なんでも飄々(ひょうひょう)とこなす天才肌に見えるが、作品に入ると食欲がなくなり痩せてしまうのだそうだ。

「舞台は特にそうですね。いろんな欲がなくなります。でも、食べないと体がもたないから、何かしら摂取するようにしていますが、何を食べたのか覚えてないんですよね(笑)」

俳優・森田 剛