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半世紀前のライヴ盤でも、いいものはいい。『Grateful Dead』グレイトフル・デッド。バラカンが選ぶ夏のレコード Vol.15

ピーター・バラカンが選ぶ32枚のレコードストーリー。「ピーター・バラカンがオーナーのリスニングバー〈cheers pb〉で夏にかけるレコードの話を聞きました」も読む

illustration: TAIZO / text: Kaz Yuzawa

『Grateful Dead』Grateful Dead(1971年)

半世紀前のライヴ盤でも、
いいものはいい。

今年発売50周年を迎えた名盤中の名盤。ニューヨークのフィルモア・イーストでのステージを中心に構成された2枚組のライヴ・アルバムです。

発売と同時にゴールド・ディスクを獲得したこのアルバムは、グレイトフル・デッドのアルバムとしては7作目、ライヴ盤としては2枚目に当たります。英語の通称は「Skull & Roses」、日本語では「薔薇と骸骨」、なぜか順番が逆になりました。

1965年のデビュー以来、一貫してサイケデリックなイメージを保ってきたグレイトフル・デッドですが、1970年に『Workingman's Dead』と『American Beauty』という、共に短めでメロディのはっきりした曲を収めたアルバムを、2作立て続けに発表し、それまでのぶっ飛んだイメージを払拭しました。

そして、その次に出したこのライヴ盤では「Bertha」のような未発表の自作の新曲のほかに、「Big Railroad Blues」のような自分たちのルーツを感じさせるフォーク・ソングを取り上げたかと思えば、例えば、ジャニス・ジョプリンの歌で知られる「Me And Bobby McGee」やチャック・ベリーの「Johnny B. Goode」、ウディ・ガスリー「Goin' Down TheRoad Feeling Bad」、バディ・ホリー「Not Fade Away」といった、ローリング・ストーンズからの影響も感じるカヴァーを選曲して、その懐の深さを感じさせています。

それでいてアルバム全編を通しては明るい雰囲気が通底していて、やはりグレイトフル・デッドは一筋縄ではいきません。いまだに色褪せない傑作のライヴ・アルバムだと思います。

そしてこの6月には、50周年を記念して最新リマスター・エクスパンデッド・エディションがCD2枚組で発売されたばかりです。ボーナストラックは2枚目のCDをフルに使って、フィルモア・ウェストでの未発表ライヴ10曲が収められています。

僕は基本的に、未発表テイクには未発表になるだけの理由があると思っていますが、グレイトフル・デッドのライヴは別。

Grateful Dead

side A-1:「Bertha」

2枚組のライヴ・アルバムのオープニングを飾り、一気にデッド・ワールドへ引き込む名曲。底抜けに明るいこの当時の新曲を聴くと幸福感に包まれ、聴けば必ず元気が出ます。ジェリー・ガルシアのメイジャー・スケイルのギター・ソロからはカリフォルニアの夏がほとばしってくる感じです。