何にも縛られず、自由にゲームの世界を堪能したい。RHYMESTER・宇多丸なりの、ゲームの楽しみかた

プレイスタイルだって、十人十色。ゲームを愛してやまないラッパ—、ラジオパーソナリティ・宇多丸が語る、思い入れのある作品への愛と自分にとって最高の遊びかた。


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photo: Takao Iwasawa / text: Tomoyuki Mori

世界をどこまでも自由に堪能し尽くしたい。果てなきオープンワールドに身を置く快感

僕らの世代のゲームとの出会いは、ゲームセンターがメインでした。新しいゲームが登場するたびに最先端のテクノロジーを体験し、未来を見たような気になってワクワクして。当時の僕にとってファミコンはゲーセンの二の次、あくまでも“見立て”だったんです。

本格的にゲーム機で遊ぶようになったのは、1994年にプレステが販売されてから。以降、“ゲームの中に個別の世界が広がっていて、その中を自由に楽しめる”という作品が次々と出てきたんですよね。

初めてプレイしたプレステ用のソフトは『リッジレーサー』なんですが、3D空間がしっかり作られていたし、かなり自由度が高かった。ソフトをダウンロードすれば好きな音楽をBGMにしてドライブできるし、遊びかたの幅が広いんですよ。

『トバル ナンバーワン』もそう。鳥山明がキャラクターデザインを手がけたバトルゲームなんですが、僕はむしろダンジョンを歩き回って探索するクエストモードが好きで。今振り返ってみると、オープンワールド的な楽しみ方をしていたのかもしれません。ゲームの中に広がっている世界を、心ゆくまで味わいたい。やっぱり、それに尽きるんですよね。

ゲームの好みを決定づけたロックスター社の『GTAⅢ』

オープンワールド系で最も衝撃を受けたのは、『Grand Theft Auto Ⅲ(GTA Ⅲ)』ですね。舞台はアメリカの架空の都市で、自動車を強奪しながらミッションをこなしていくゲームなんですが、世界観もデザインも完全に自分の好みだったんです。

新宿のTSUTAYAで初めて映像を見たときは「これを作った人は映画の趣味がめちゃくちゃ近いし、ゲームでやりたいことが完全に一致している!」と驚きました。各チャプターのタイトルがヒップホップ・クラシックの曲名だったり、カーラジオからは90年代に人気だったヒップホップラジオ番組『ザ・ストレッチ・アームストロング&ボビート・ショー』が流れてきたりと、とにかくセンスがいい。というか、自分と趣味が合う(笑)。

『GTA』シリーズを制作したロックスター社の作品はもちろん、すべてハマりました。西部劇的な世界の中で、アメリカン・ニューシネマ的な雰囲気を体感できる『Red Dead Redemption』も素晴らしかったし、何といってもすごいのは『The Warriors』。

70年代後半のニューヨークを舞台にギャングたちを描いた映画のゲーム版なんですが、ヒップホップ黎明期のこともよくわかっているし、弱小チームだった“ウォーリアーズ”をデカくしていくストーリーや、映画版の名セリフの使いかたも最高。現在のロックスター社は創業者のダン・ハウザーが退職し、大作主義になっていて。以前とは方向性が違いますが、この20年間、とことん楽しませてもらいました。

RHYMESTER・宇多丸
誰にも邪魔されずに隙アリなモブキャラと戯れる至福の時間!

最新宇宙科学を背景にした『Starfield』の魅力

今やり込んでいる新作は『Starfield』。宇宙を舞台にしたオープンワールドRPGです。開発元であるベセスダ・ソフトワークスがマイクロソフトに買収されたから、『Starfield』はXboxでしかプレイできないということだったので、すぐに買いました(笑)。いろいろな意見があるようですが、自分としては「さすがベセスダ、よくできているな」という評価ですね。

まずは“NASAパンク”と呼ばれている世界観。すべてが最先端の宇宙開発の延長線上にあるんですよ。宇宙船同士がドッキングするときは減速しないといけないし、無重力空間での操作も必要。その星の気温や酸素濃度によって服を替えたり、建物に入るときはエアロックを外したりしなくちゃいけない。しかも適度に簡略化されていて、難しすぎないところもちょうどいいんですよね。

宇宙を探険する集団(コンステレーション)に参加して、いろいろな星を探索するという基本設定があって、もちろんゲーム的なストーリーがあるんだけど、クリア自体はそんなに大変ではなくて。むしろ面白いのはその後なんですよ。

ネタバレしないように話すと、SF好きだったら「なるほど、そっちね!」という仕掛けがあって。その後の展開は、プレイヤーの選択によって大きく変わってくるんです。その人自身の生きかたや価値観、「人類はどうあるべきか」というテーマも含みながら、広大な宇宙空間を自由に味わい尽くすというゲームですね。

哲学的なところもあるんだけど、単純に楽しく遊び続けることもできます。例えば「アキラ・シティ」という、西部劇的な星。そこに保安官として降り立って、ガンマンたちとの撃ち合いを楽しみながら、謎を解いていくという楽しみもあるんです。

今2周目なんですけど、世界が全く違うふうに見えています。僕は「行けるところには全部行きたい派」なので、宇宙船でビュンビュン飛び回っています。

オープンワールド系のゲームで、誰にも指示されず、自分の好きなようにその世界を楽しみたい。その理由は、僕自身が“何にも縛られず、時間を自由に使うこと”を普段の生活の中でも大事にしているからなのかなと。ゲームで遊ぶときも、それと同じ感覚です。

ただ、ゲームの楽しみかたは人それぞれ。当たり前ですが、同じゲームであっても、遊びかたは人によって全く違うんですよ。“人のセックスを笑うな”じゃないけど、他人のゲームの好みやプレイスタイルにあれこれ言うのは野暮。みんな好きなように楽しむべきだと思います。

X boxとX box One S

『Starfield』をプレイするために購入したというXbox One S(宇多丸さん私物)。「コンパクトさとマットな質感がいい。コントローラーの操作感は完璧ではないですが(笑)、それもまた一興」

宇多丸がおすすめする3作品

Sniper Elite 5(2022)

対応機種:PS5/PS4/XBX/PC

“狙撃”に重点を置いたシューティングゲーム・シリーズ第5弾。「フランスの田舎町をのんびり散策しながら、気が向いたときに隙だらけのNPCを襲撃する遊びをしています。緊張感のバランスがちょうどいい」

Return of the Obra Dinn(2018)

対応機種:Sw/PS4/XBX/PC

船員がいない状態で発見された商船の謎を解き明かすミステリーアドベンチャー。「時間を巻き戻す特殊な能力を使いながら、船員の死因を解明していく大人のゲーム。悪夢の中をさまようような感覚も斬新です」

Gorogoa(2017)

対応機種:Sw/PS4/XBX/PC/iOS/And

ジェイソン・ロバーツが開発したパズルゲーム。2×2の枠内にある画像を操作し、物語を展開させる。「主人公が置かれている状況が少しずつ見えてくる仕掛けも抜群だし、抽象的でシュールなデザインは現代アートの域」

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