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インディーゲームは、クリアだけが目的じゃない!アーティスト・オオクボリュウなりのゲームの楽しみかた

プレイスタイルだって、十人十色。インディーゲームを日常的に楽しんでいるアーティスト、オオクボリュウが語る、思い入れのある作品への愛と自分にとって最高の遊びかた。


本記事も掲載されている、BRUTUS「GAME STYLEBOOK 2023 ゲーム、どう楽しんでる?」は、好評発売中です。

photo: Mikako Kozai / text: Ku Ishikawa

インディーゲームをアートに触れる感覚で。クリアだけが目的じゃない多様さが面白い

物心ついた頃には、常にゲームがそばにありました。流行りのタイトルをスーパーファミコンで遊んで、とにかく熱中して。でも、高校生くらいからはほかのことに興味が湧き始め、一度ゲームからは離れてしまったんです。

再開したのは、そこから随分と時間が経った4、5年前のこと。仲のいい友人から、インディーゲームというジャンルを教えてもらったのがきっかけです。資本にとらわれず、少人数で制作しているのに高クオリティ。キャラクターの動き、背景のグラフィック、文字のデザインなど、モノ作りを生業(なりわい)にする一人として、共感する部分が多かったんです。

それからはNintendo Switchを買い、仕事場で『スプラトゥーン』シリーズなどの大作もプレイしながら、インディーゲームを変わらずチェックし続けています。作業の合間、ふと気がついたらゲーム画面を開いていることも。日常的な存在です。

Nintendo Switchの『ポケモンSV』エディションカラー
オオクボさん私物のNintendo Switch。『ポケモンSV』エディションカラーを愛用中。

魅力の一つは、王道ゲームのセオリーから外れまくっていること。クリアすることが前提でなかったり、10分程度で終わったり、チュートリアルや説明が一切なされなかったり。だから、「ビジュアルは良いけど、面白くない」と感じる人もいると思います。

でも僕は、それを言ったらおしまいかなって。例えばコンセプチュアルアートという、考えかたそのものが芸術とされる分野がありますが、それに対して鑑賞者が「訳わからん」と言ったら、そこで話が終わってしまう。視点を変えれば、全く異なる楽しみ方ができるのがインディーゲームだと思うんです。

最も印象に残っているのは最も困惑させられた作品

『Kentucky Route Zero』は、僕を最も困惑させた作品。キャラを動かしてストーリーを進めるアドベンチャーゲームですが、まず風景のアングルが引きすぎで、どこを操作しているかわからない。と思ったら、いきなり鳥に連れ去られ、何もできない状態が続く。

でもすべての構図が、ゲームというより映画的。そこに作者の美意識が感じられるし、僕はそういうところを楽しんでいる。映画や小説、アートに触れる感覚に近いのかもしれません。

アーティスト・オオクボリュウ
アトリエで作業の合間にプレイすることもしばしば。

オオクボリュウがおすすめする3作品

Lieve Oma(2016)

対応機種:PC

ゲームデザイナーFlorian Veltmanが自身の祖母との思い出を回顧して生まれた作品。祖母と孫の2人が、秋に染まった森の中でなにげない会話をしながら散歩する。「英語のみだが、平易な日常会話なので理解しやすい」

TET(2023)

対応機種:PC/iOS/And

TETとはベトナムの旧正月。ベトナムにルーツを持つ作者が自国の食文化を知ってもらうために作ったゲーム。「出てくるイラストは一枚ずつ描いているはず。イラストレーションがそのままゲームになるのがいいです」

ISLANDS:Non-Places(2016)

対応機種:PC/iOS

対応機種:PC iOS And
NY在住のアニメーター、Carl Burtonによる作品。映し出される風景の一部をクリックすると、不思議な動きが始まりすべてのトリガーを発動したらクリア。「動きがすべて予想外で、地味だけどすごく没入感を覚えますね」

Special Thanks:©2023 Cardboard Computer, LLC. ©2022 Playables, Charlotte Broccard ©2016 Carlburton LLC