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稀代のレコードコレクター、小西康陽さんが選ぶ「ぼくの好きな歌謡曲」20枚 〜後編〜

稀代のレコードコレクターで、ドーナツ盤のDJが人気の小西康陽さん。「ぼくの好きな歌謡曲」を20枚選んでもらいました。前編はこちら

photo: Koichi Tanoue / edit: Izumi Karashima

小西康陽

次はDJとしてのフェイバリットを。

BRUTUS

トップバッターは、先ほども話題になったシャ乱Q「ズルい女」(13)。95年の大ヒット曲。

小西

当時、家の近所のコンビニで耳にしたのが最初。あれ?なんでオリジナル・ラブをバックに長渕剛が歌ってるの?と思った。

B

言われてみれば(笑)。

小西

つんく♂さんが天才だと思い知ったのは、それからもっと後モーニング娘。の楽曲でしたが、その原点と言える名曲。歌謡曲として好きですね。

音楽家・小西康陽
出会えていない未知の歌謡曲はまだまだたくさん。

B

ちなみに、小西さんの、歌謡曲とそうでないものの境界線は?

小西

なんだろうなあ……。例えば、僕はマイナーキーの曲はあまり作らないし、好きな曲もマイナーキーのものはほとんどない。でも、歌謡曲だけは別。

今日選んでいる20曲も8割はマイナーキー。日本人の、というかアジア人の心の琴線に触れるからなんでしょうね。あと、歌謡曲には独特の「水っぽさ」があるんですよね。

B

夜の街的な色気がある?

小西

そういう意味で、ピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」は僕の曲だけど、水っぽさがある。あるとき、映画を観に池袋新文芸坐へ行ったら、目の前の風俗案内所で「東京は夜の七時」が爆音で流れてた。「ああ、いい曲だなあ」って思っちゃった(笑)。

B

そして、田原俊彦「抱きしめてTONIGHT」(14)。88年、昭和末期のヒット曲です。作詞・森浩美、作曲・筒美京平。

小西

(踊りだす小西さん)キャッチーなイントロ!京平さんは最高です。問答無用の名曲。

B

どんどん行きます。チェッカーズ「ギザギザハートの子守唄」(15)。83年のデビュー曲。

小西

チェッカーズをDJで使うときは、たいてい3〜4曲続けてかけるんです。最近の僕は、クイックに曲の途中でどんどん換えていくスタイルなので、ある日、この曲をそうやってかけたら、みんなにガッカリされた。

この曲だけは、最後までかけなきゃいけないんだと、その後知ったんです。というのも、3番の歌詞でダチが死ぬんだけど、そこでみんな膝をついて黙祷を捧げるんですよ。

B

「仲間がバイクで死んだのさ♪」はチェッカーズも膝をつくんです。そこ大事(笑)。チェッカーズの良さって何だと思います?

小西

やっぱり、昭和という時代の終わり頃を象徴する音楽ですよね。あと、やんちゃな感じが大衆の心をつかむよね。文化系の僕には程遠く、憧れですね(笑)。

B

82年のシブがき隊「NAI・NAI 16」(16)から、81年のシャネルズ「ハリケーン」(17)へ、やんちゃ繋ぎ(笑)。

小西

どちらも井上大輔さんの楽曲。井上さんは、ある時代の日本人の心をわしづかみにした作曲家。もっと評価されるべき方なんです。

B

そして、88年の大ヒット曲「ようこそここへ 遊ぼうよパラダイス♪」へと続きます。

小西

光GENJI「パラダイス銀河」(18)は、ここ10年、僕のDJのクライマックスで必ずかけます。当時から大好きな曲だったし、作詞・作曲の飛鳥涼さんも一番脂が乗っていたと思う。

B

で、BOØWY「B・BLUE」(19)。86年の曲。小西さんがBOØWYをかける日が来るとは。

小西

最近は「ホンキー・トンキー・クレイジー」もよくかけます。いまの日本のクラブの店長は、全員BOØWYが好きなんだなと思うほど、かけると絶対に盛り上がるし、僕への接し方も急に良くなる。

B

いい話です(笑)。

小西

そして本日のラストは、ずうとるび「ウッカリBOY チャッカリGAL」(20)。79年の曲。

B

めちゃめちゃカッコいい曲! 

小西

いま一番好きな曲。作詞・作曲は近田春夫さん。近田さんとしても自分の趣味全開で、エドガー・ウィンターみたいな曲なんです。

この曲を知り、レコードを探し回ったけど、どこにもない。そうしたら、メルカリで「ずうとるび15枚セット」が。やったー!急いで買いました(笑)。