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古川琴音×松岡一哲が語る写真集『CHIPIE』の舞台裏。「自分をやっと愛おしく思えた」

古川琴音の2冊目の写真集『CHIPIE(シピ)』が発売される。話題となった、前作の台湾で撮られた『pegasus 01 古川琴音×松岡一哲』からはや6年。今回も古川が信頼を寄せる松岡が撮ることになった。舞台はドイツのフランクフルト。古川がこの町で毎年初夏に開催される『ニッポン・コネクション』という映画祭に招待された折に、そのドキュメントのように撮影された。古川にとっては初めての海外映画祭。すべてが初めて尽くしの旅の中で、古川が見せる誰も見たことのないような表情とは。その舞台裏も含め、古川と松岡に語ってもらった。

text: Mikado Koyanagi

古川琴音

一哲さんとは、まだ事務所の研修生の時に初めてお会いして。カメラマンさんに会うというのも初めての経験で。

松岡一哲

その時たまたまカメラに入っていたモノクロのフィルムで一枚写真を撮ったんです。

古川

『pegasus』の最初のページのあの写真ですよね。その時から思っているんですけど、一哲さんには写真を撮られている感じがしないんですよ。気づいたら写真ができているというか。一哲さんの撮る、その力の抜けたありのままの自分の姿を見るのも好きなんですよね。

松岡

最初に会った時も、今回も思ったけど、琴音さんにはどこか神秘的な美しさがあります。綺麗を超えた存在というか。

古川

ありがとうございます。『pegasus』を撮った時は、まだ仕事を始めて本当に間もない頃で、何にも染まってない、ただただ楽しんでいる姿を撮ってもらっていて。私の中でも大切な仕事の一つだったんです。だから、また一哲さんに写真集撮りましょうと声をかけていただいた時はすごく嬉しかったけど、前の作品が自分の中でまだ大きな存在を占めていたから、どうしても意識しちゃうというか。それが結構プレッシャーではあったんですよね。

松岡

今では背負っているものも増えたしね。それに今回は映画祭もあったから、それでなくてもピリピリしていたよね。

松岡一哲が撮影した古川琴音

古川

でも、あとから一哲さんの写真を見て、あの時ぐるぐる考えていた自分の表情って、自分で言うのは恥ずかしいけど、こんな綺麗な顔をしていたんだなって。その時の自分をやっと愛おしく思えました。

松岡

今回のテーマの一つに、そんな場所で闘っている琴音さんを撮るというのもあったからね。

古川

その後、会場を離れて、フランクフルトの街中や自然の中で撮影した時は開放的な気分になりました。湖に飛び込んだり(笑)。それはある意味、自分の心の中にダイブしていくという感覚で、曇天の灰色の湖の空気にもぴったり合っていたかも。

松岡

いや、美しかったですよ。それこそ神秘的というか。

松岡一哲が撮影した古川琴音
映画祭だけでなく、フランクフルトの街中や自然豊かな郊外での様々な古川の表情を見ることができる。

古川

あと、私の中では、今回の写真集は、街角のスナップ写真にたまたま写っている一人の女の子のようにも感じられるものにしたかったんですよね。基本的に、役を演じる時以外は、ありのままの人間でありたいと思っているので。

松岡

それを言うなら、あのスーパーマーケットのレジに並んでいるところを撮った写真だよね。それこそ、ただ人として存在している画(え)だなあと思って。とにかく、琴音さんはいつも自由に動いてくれる。そんなちょっとした仕草の節々に表現者である琴音さんが宿っていて、そんな瞬間をすっと掬(すく)い取りたいと思っているんです。そういえば、写真集のタイトルの「CHIPIE」って琴音さんが考えたんだよね。

古川

フランス語で、いたずらっ子とか小悪魔という意味で、私が好きな猫の名前にも多いらしいんです。何者かわからない、得体の知れない女の子の本というイメージに合うかと思って。

松岡

琴音さんという存在はそれこそシピだと思う。琴音さんが演じているのか、本人そのものなのかさえわからなくなってくるけど、僕はそれをただただ追おうと。