世界中の珍(レア)ヴィンテージをセレクトした古着のブティック
店に入り目に飛び込んでくるアイテムは、ヒッピームーブメント期に作られた手刺繍のウェア、ウエストにレースの付いた50年代のジーンズ、寄せ書き多数のメモリアルパンツ。ほかにもエアブラシペイントのポリシャツに刺し子を用いた野良着、ウエスタンブーツブランドのスニーカーブーツなどなど。他店ではコレクションピースとして大事に飾られるか、むしろバイイングされない可能性もありそうな上級者向けなデザインのものばかりが並ぶ。
ここ〈アーユーディファレント〉は古着の聖地、福岡・大名にあり、その中でもズバ抜けて異彩を放っている2019年オープンの注目店だ。東京のファッションデザイナーやディレクターに「福岡で行くべき古着屋は?」と尋ねると必ずと言っていいほど、この店の名が返ってくる。
店名から“あなたは違いのわかる人か?”と、試されているように感じつつ店に着くと、早速迎えてくれるロングヘアにパンプスの2人組のオーラが明らかにやばい……。
恐る恐る店内に入り、オーナーの荻野友彰さんに店名の由来を聞いてみると、「みんな違った個性で大丈夫って意味なんです。いつも逆の意味で捉えられるんですよ」と嘆くように笑って答えてくれた。このギャップもまた、多くの服好きがここに惹きつけられる要因の一つなのだろう。
荻野さんは、オーストラリア大陸の先住民アボリジニの木管楽器・ディジュリドゥを使ったトランスバンドを組んでいる個性派。学生時代から自身の学制服をわざわざ紳士服店で仕立てたり、カッターシャツをリメイクして丈を短くしたり、刺繍を入れたりしていたというからこのセレクションも腑に落ちる。
「買い付けは田舎から都会まで幅広く回るようにしています。各地のスリフトショップでもそれぞれの刺激があるので。Tシャツだけ普段はあまり買わないのですが、よく“Tシャツはないんですか?”と聞かれるから、さすがにダメかなと思いちょろっと置いています(笑)」
スタッフを連れ、主にアメリカで買い付けをしているようだが、日本の藍や刺し子に着目することもあり、そんな時は地方の蔵出しを巡ったりすることもあるというからすごい。どれほど古着が好きなのかを探ると「新しいものも好きなんです。今のデザイナーが作るものやコレクションもよく見るし、ランウェイから着想を得て、ショップの宣伝に使う写真のために、ストリートでハントしたモデルを起用したりしています」とまさかの返答が。
確かに荻野さんの身なりを見ると、ジャケットは〈ジュンヤ ワタナベ マン〉の新作と見受けられる。つまりここはただヴィンテージの珍品を集めているのではなく、それらを今のファッション目線でさらに厳選して並べているわけだ。
「偏ってますね、とか貫いてますね、ってよく言っていただけるんですが、全然そんなことないんです。昨日までスラックスばかり扱っていたのに、突然モトクロスパンツ一色になったりもしますし(笑)」
古着を扱っているのに今を追いかけている〈アーユーディファレント〉。ガラリとスタイルを変えて昨日と違うヴィンテージを陳列し、まるでセレクトショップのように変化するのもほかにはない魅力だと思う。
買い物のあとに、古着メシ
※紹介した古着の多くは一点物で、品切れの場合があります。価格等の情報は取材時のもので、変更になる場合があります。