まず「村上春樹と私」的な話。中学生の頃、書店の店頭にずらっと並んだ赤と緑の『ノルウェイの森』の表紙にジャケ買い的感覚で引き寄せられて、手に取ったのがすべての始まりで。そこから世の多くの人たちと同様、村上文体とその世界観のとりこになり、過去作を読み漁り、新刊を待ちわびるようになり……。さらには、これだけ自分に影響を与える「本」の力というものへの興味を持ち、編集者という仕事を意識し始めたのでした。きっかけは、紛れもなく村上春樹。
そんな村上さんと一緒に仕事をできるということは、もうそれは中学生の自分をこの場に連れてきて自慢しまくりたいような体験なわけです!でも私のような出版人にかぎらず、村上作品になにかしら影響を受けたという人は少なくないでしょう。
今回の2号連続「村上春樹」特集の上巻では、世の中に強く影響を与える本を書いてきた村上さん自身が「手放すことができない」と語る51冊の本について、私的な案内文を寄稿してくれています。その中には、「小説を書こうと思った時に何かと役にたった」作品や、「いちばん文章がうまい」作家についてなど、小説家・村上春樹の根幹を成していそうな本の話がたっぷりと収められています。
中学生の自分にも読ませてあげたかったなー、なんて思ったりもしました。必読。
中西 剛(本誌担当編集)