歩くことで救われる。熊野古道の感想
取材で、音楽家の蓮沼執太さんと和歌山県・熊野古道に行きました。1,000年以上の歴史を持つ巡礼の道を初体験する蓮沼さんに、フィールドレコーディングの機材を持って、音を感じてもらうという企画です。
私自身も熊野ははじめて。巡礼というと神聖で敷居の高い行為のようにも聞こえますが、実際に歩くと、舗装された車道を通ったり、集落を横切ったり、居心地のいい茶屋があったりと、のんびりとしたいいトレッキングでした。
もちろん、随所に神社や祠があったり、森の奥深くに入るとちょっと普段は出会えないような静けさがあったりと、荘厳な雰囲気もあります。ゴールの熊野本宮大社に着くと、やっぱりどこか救われたような気持ちになり、改めて家族や友人の健康を祈ったりもしました。
でも、一番尊いのは、歩くという行為それ自体なのかも。無心で歩くと(結構急な坂道もあります)、だんだん頭が空っぽになっていきます。サウナにも似ていますね。普段よりも五感が研ぎ澄まされているのかもしれません。熊野古道は歩くこと自体が文化遺産であると、今回お世話になった和歌山県田辺市観光振興課の方にも教えてもらいました。
古くから多くの旅人が訪れた理由が少しわかった気がします。東京に帰ってからも、近所の神社やちょっとした緑に目が向くようになりました。