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「何度でも観たい映画。」編集後記:何度も観る映画≠一番好きな映画

2022年11月1日発売 No.973「何度でも観たい映画。」を担当した編集者がしたためる編集後記。

数年前、お笑い芸人のくまだまさしさんが映画『プリティ・ウーマン』を400回以上観ているという記事がSNSで話題なったことがあります。

20歳の頃、くまださんが好意を寄せていた女性がジュリア・ロバーツ好きで、話を合わせるために観ることに。それから、面白さを感じるポイントが変わっていき二度目、三度目、ついには楽しいのかどうかもわからない、でも観てしまうような生活の一部になってしまった。ざっと説明するとこのような内容で、最終的には、推定2100回も観ているかも、という結論に(笑)

このとき思ったのは「何度も観る映画≠一番好きな映画」ということ。
それは個人的にも当てはまる話で、一番好きな映画は『仁義なき戦い』だが、何度も観る映画は『イントゥ・ザ・ワイルド』だったりします。最初の頃は当然好きだから何度も観るが、そのうちに、なければならないもの、戻ってくる居場所のような存在になってしまう。その結果、好きとかそういう概念を超えて、映画が自分の一部にまでなってしまう。きっと誰にもそんな1本があるはずです。

「映画選びの教科書」表紙
個人的に何度も観てきた映画は『イントゥ・ザ・ワイルド』。初めて作品を知ったのは、2007年のBRUTUS映画特集。おそらく30回は観ているはず。

特集を通し、数十人に話を聞いたわけですが、ある人は、観た当時の初心を思い出すためだったり、ある人は、映像の余白に自ら物語を想像を巡らせるためだったり。1本の映画を通すことで、十人十色の人生がふっと浮かび上がってくるのがとても印象的でした。

そしてなによりも、誰かが何度も観てしまう映画というのは間違いなく名画であるということ。熱く魅力を語ってくれれば、観ないわけにはいかない。この特集を作っていた2ヶ月、週末は自宅に缶詰で映画三昧の日々。読者の方々にとっても、綺羅星の如き名画と出会える、あるいは時間が奪われる危険な号であってほしいと願っています。