「もうちょっと、話しましょうか」。クリス松村さんとの6時間にわたる対談のあと、達郎さんの口から出た言葉です。特集にすべて掲載するにはまだ内容が足りないのでは、そう案じた達郎さんが自ら申し出てくださり、急遽、翌日に延長してさらに2時間、お話を伺わせて頂けることになったのです。
思えば企画書とともに「丸ごと1冊山下達郎特集をつくりたい」とお願いしに行った時も、達郎さん自ら「もっと他にない企画にしましょうよ、多くの人に楽しんでもらえるような」とさらに何度か綿密な打合せをさせて頂けることになったのでした。思えば「なるべく達郎さんに負荷をかけないように」と編集部が過剰に気を遣っていたのかもしれません。
そうして新譜製作とツアーの間の貴重なお時間を頂きながら作った特集はまさに「山下達郎全仕事」であり、日本のポップスの歴史が凝縮された1冊に仕上がりました。
そして、対談で何度も感じた、少しでも良いものをつくるために時間と手間を惜しまず全身全霊を捧げる姿勢というのは、まさに今回の特集への向き合い方にも通じるところがあったのです。プロフェッショナルとしての山下達郎という人間の凄さを間近に見させて頂き感動すると同時に、ますますファンになりました。
コアな山下達郎ファンが読んでも、最近のシティポップブームで聴き出した若い方々にも楽しんでいただけるような、完全保存版ができあがったかと思います。どうぞお楽しみください。
「山下達郎の音楽履歴書」特集 編集後記:プロフェッショナルとしての、山下達郎さんの凄さ