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「珍奇鉱物」特集 編集後記:「鉱物沼」は想像以上に深かった……。

2022年6月1日発売 No.963「珍奇鉱物」を担当した編集者がしたためる編集後記。


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2015年に「珍奇植物」という特集が組まれ、7年が経ちました。植物は全4冊(+合本ムック2冊)、昨年にはシリーズ第二弾として「珍奇昆虫」特集を刊行。その発売直後に、珍奇特集を一緒に作っている編集者の川端正吾さんから、「次は鉱物だよ」と、分厚い企画書が送られてきました。

ジュエリーでもパワーストーンでもない石の特集、一体どんなものだろう?と企画書に目を通して驚嘆。人智を超えた美しい造形の鉱物たちに、一瞬で目を奪われました。燃えさかる炎のようなロードクロサイト、多彩に輝き怪しく発光するフローライト、荒々しい母岩に凛と佇むアクアマリン……。これらが地中深くで自然と生まれることに衝撃を受け、同時に、大袈裟かもしれませんが、「地球の営み」の尊さが心に深く突き刺さりました。盛り上がったテンションのまま編集長へ話を持っていき、特集の実現へと至ったのです。

いざ特集製作へと踏み出すや否や、その魅力にズブズブと。“珍奇シリーズ”では毎度お馴染みですが、今回も例のごとく、いやいつも以上に、リサーチや取材先で鉱物を買い込んでしまいました。愛好家の皆さんが口にする「鉱物沼」とはこのことか……!と、気付いた頃には時すでに遅し。鉱物標本の千差万別具合は植物や昆虫以上で、色・形・大きさ、どれをとっても唯一無二。それゆえに沼が深く、グッとくる標本に出会ったら買わなくてはならない、という(勝手な)使命感に駆られるというわけなのです。

かくして増えていくコレクションを眺めながら、どう保管しようか、どう飾ろうかと考えるのが至福の時間。しばらく沼から抜け出せそうにありません。

BRUTUS ブルータス 珍奇鉱物の数々
特集制作期間に買い込んだ鉱物たち。アクリルベースにマウントされた標本類はケースにしまって保管していて、大きな石はキャビネットの上や置物の横などにゴロッと並べています。発売日直前の週末には「新宿ショー」と呼ばれる大規模な鉱物フェアがあり、発売日からはBRUTUS主催で鉱物イベントを開催するので、ますます置き場に困ることになりそうです……。
珍奇シリーズでは毎回「図鑑」ページを作っているのですが、この写真選びと並びを考えるのが本当に楽しいのです。ページ数の関係で、泣く泣く掲載を見送らなくてはいけない鉱物も出てきたり、今回も悩みに悩んで制作したので、ぜひご鑑賞ください。

辻田翔哉(本誌担当編集)

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