日本映画を再発見しませんか
今年、アメリカの『ニューヨーク・タイムズ』が発表した「21世紀の映画ベスト100」。そこで選ばれた日本映画は『千と千尋の神隠し』('01)、たった1本でした。まぁそんなものかなと思いつつ、この25年、面白い邦画ってたくさんあったよな?と思いました。
味わったことのないカタルシスが待つ青山真治監督の『EUREKA』が2001年。「ビューだね」がぜったい口癖になる『刑務所の中』が2002年。浅野忠信さんが無敵だった頃の『アカルイミライ』が2003年。思い出すだけですぐ観返したくなる日本映画が、次々と思い出されます。
あれから20年あまり。映画を観に行くことが滅多にない友人が「『国宝』観た?」と聞いてくるのが今、2025年です。ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞した三宅唱監督の新作『旅と日々』もいよいよ公開しました。ファーストカットを観ただけで、これはなんだかすごい映画だと思うに違いありません。
蓮實重彦さんの映画論集成『日本映画のために』(岩波書店)が出版されたのも、つい先日のこと。出版に合わせて「シネマヴェーラ渋谷」で開催された特集上映で、『阿賀に生きる』('92)を観ました。すごい映画でした。新潟水俣病の訴訟を追いかけた映画とも言えるのですが、文字通り、阿賀に生きる人々の暮らしぶりを3年間住み込みで撮影した、魂の力作です。
ああ、観てない古典も山程ある。なんだか忘れていたような、邦画の味わい、面白さ、美しさというものを再発見してみようというのが今回の特集の趣旨です。
取材で話を聞いたアリ・アスター監督は、新作『エディントンへようこそ』を撮りながら、今村昌平監督作『楢山節考』('83)のことを考えていたと言います。当たり前ですが、日本映画は、日本人だけのために作られているわけじゃありません。
