アニメ映画を線で見る
映画館で観るアニメは、いくつになっても特別です。特に自分は手描きの手触りがある作品に惹かれるのですが、誰かが引いた線が生き生きと動いているのを観ると、なぜだか泣きそうなくらいドキドキします。大きなスクリーンに吸い込まれて、その世界だけに夢中になる時間。劇場アニメ『ルックバック』の公開翌日に映画館に行った時も、線の躍動と情感に圧倒され、忘れたくないなとパンフレットを買ったのを覚えています。
来春に東京〈麻布台ヒルズ ギャラリー〉で押山清高さんの展覧会が開かれると知り、特集での取材をお願いしました。なぜ私たちはあの作品の線に強く心を動かされたのか、日本のアニメーション表現にはどんな可能性が秘められているのか。押山さんの視点をお借りして完成した16ページの付録小冊子に、その答えの一片と、アニメ映画を深くたのしむためのヒントを見つけていただけるのではと思います。
押山さんの仕事場でのインタビュー、影響を受けたアニメ映画12本や、自ら選んでくださった作中の“あのシーン”の原画。そして『ルックバック』の原動画担当、押山さんが尊敬するアニメーター井上俊之さんからの言葉も必見です。押山さんと井上さん、描き手としての2人の思考に触れてから、ぜひページをめくって、いろんな線から立ち上る気配や味を感じていただけたら嬉しいです。

