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「NHKのつくりかた」編集後記:夏休みを救ってくれた“3チャンネル”

2025年8月16日発売 No.1037「NHKのつくりかた」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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夏休みを救ってくれた“3チャンネル”

家のテレビは、4つのチャンネルしか映らなかった。生まれ育った町では東京の電波が入らない。地元の民放はたった2局しかない。だから家のリモコンは1と3と4と6だけが薄くなっている。そんな少年時代の私にとってNHK(特にEテレ)は生命線だった。

小学校低学年の夏休み、共働きの両親が仕事に出かけると、チャンネルをすぐに“3”に切り替えた。『ピタゴラスイッチ』や『ストレッチマン』あたりからはじまり、『プチプチ・アニメ』の『ニャッキ!』や『ざわざわ森のがんこちゃん』『クインテット』に『おじゃる丸』、母親が帰ってくる18時ごろまで、ずっとEテレを流していた気がする(正確には同時期にやっていない番組もあるはずだが、記憶がごちゃ混ぜになっている)。

『地球ドラマチック』が終わるあたりが夕飯の合図だった。自然科学と歴史系のバランスがよくて、たった45分の番組だったが、子ども向けにセレクトした世界中の興味深いドキュメンタリーを放送していた。そこで知った世界中の摩訶不思議な現象や古代の生物たちの話は今でも記憶の奥に残っている。

小学校6年生の時、大河ドラマ『風林火山』がスタートした。地元が舞台の作品だったので見始めたが、どんどん沼にハマっていった。市内にあった撮影地や最後の紀行コーナーで紹介される名跡に足を運び、地元の書店に並んだ関連書籍を一通り買って読み漁った。

集まった情報を自分でノートにまとめるのが楽しくて、時間があれば部屋にこもっていた気がする。思い返せばそんなところに今の仕事に繋がるきっかけがあるのではないかとも思う。

そんな自分が、NHKの特集を作るとは思いもよらなかった。特に少年時代を支えてくれた『ピタゴラスイッチ』やがんこちゃん、ニャンちゅうに取材をできたことは、あの頃の自分にも伝えてあげたい。

そして、番組を取材して感じたことは大人たちが真剣に子どもの番組を作っているということ。何もかもが資本主義の歯車に乗って大人向けになってしまう現代で、そんなコンテンツは本当に貴重なのだ。

だからこそ、あの頃の自分は3チャンネルを選んでいた。特集を通してそんな答え合わせができたよう気がしている。

ニャンちゅうとがんこちゃん
ニャンちゅうとがんこちゃんの共演は特集p.40へ。ふたりとも久々の再会を喜んでいました。

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