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「通いたくなるミュージアム」編集後記:2025年、ミュージアムで戦争を知る

2025年1月10日発売 No.1023「通いたくなるミュージアム」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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2025年、ミュージアムで戦争を知る

数年前、〈国立ハンセン病資料館〉で開催されて話題だった「生活のデザイン ハンセン病療養所における自助具、義肢、補装具とその使い手たち」展を訪れました。意欲的な企画展もさることながら、過去の反省に立って差別や偏見をなくし、病気を理解するための解説が、歴史をなぞりながら展開された常設展が印象的でした。また、昨年〈TOTOギャラリー間〉で開催された「大西麻貴+百田有希 / o+h 生きた全体――A Living Whole」展で、〈熊本地震震災ミュージアム〉の存在を知りました。2016年に起きた熊本地震の震災遺構を巡る、回廊型の、2023年にオープンしたばかりの施設です。

ミュージアムで出会えるのは、アートや文学作品や自然標本、先達の偉業だけではありません。過去の過ちを繰り返さないためや、経験を今後に活かすために、歴史を伝える資料館もたくさんあるんです。

2025年、第二次世界大戦の終戦から、80年を迎えます。今号では、“資料館”で会える戦争にまつわる史実にも、特に注目したいと思いました。

作家・アーティストの小林エリカさんが昨年上梓した「女の子たち風船爆弾をつくる」は、戦時下を日常として生きた女学生たちを史実に基づき描いて話題になりました。この本は、戦争によって残された爪痕は、今の私たちと地続きだと感じさせてくれました。

今号では、小林さんが本の執筆にあたって通った〈明治大学平和教育登戸研究所資料館〉を一緒に訪れて頂くことにしました。この場所は、戦時中に実際に風船爆弾やそのほかの兵器の研究・製造を行っていたところです。展示を見て、資料館は、学校で習わなかった史実を教えてくれ、本で読んだものを3次元で体感できる場所なのだ、と改めて実感しました。

史実をよく知ることで、多面的に考え、想像が広がったり、他者への共感が生まれることもあると思います。日本では戦後80年ですが、世界にまさに戦時下の国や地域もある2025年1月現在。今年はぜひ、戦争資料館を訪れ、私たちの国で起こったこと、いま別の場所で起こっていることについて、考えてみてはいかがでしょうか。

〈明治大学平和教育登戸研究所資料館〉では、2025年5月31日まで企画展「女の子たちの戦争 風船爆弾作戦と本土決戦準備」を開催中です。ポスターに使われているのは、女学生たちが風船爆弾完成後の検品を行う「満球テスト」の写真。
No.1023「通いたくなるミュージアム」ポップアップバナー

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