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「美しい建築と窓。」編集後記:窓は、エフェメラル

2024年10月15日発売 No.1018「美しい建築と窓。」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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窓は、エフェメラル

1冊を通して「窓」の特集です。窓を通して建築の面白さを考える。趣向を凝らした窓のある住まいを訪ねる。窓を主題としたアートやポップカルチャーの名作を知る。窓をテーマに様々な文化を探ったら、どの分野でも「美しさとは何か」という問いに行き着きました。

取材で撮影した中で特に心に残っているのは、ガラス作家のピーター・アイビーさんの住まいの窓。「ピーターさんにとって窓とはどんなものですか」と伺うと、「エフェメラル(ephemeral)」と教えてくれました。端的に訳すと「一時的な」「刹那の」「儚い」といった意味の言葉です。

窓からのぞく景色は、一見、単に眺める景色と同じでも、そこにはたしかに窓ガラスが存在している。窓があることで、ガラスに反射した人影が外の風景と重なって見えたり、窓から差し込む光が日々微妙に異なる陰影を作り出したり、その瞬間にしか存在し得ない何かが生まれる。ないようである、ということの美学。「エフェメラル」は日本語ではあまり馴染みのない単語ですが、英語圏では自然、社会、文化、宗教にまたがる重要な概念のようです。もっと勉強してみたいと思っています。

ピーターさんの家の窓からの景色。
ピーターさんの家の窓からの景色。
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