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「小さなアートと暮らしたい。」編集後記:私も、アートが遠いと思っていた一人です

2024年6月17日発売 No.1010「小さなアートと暮らしたい。」を担当した編集者がしたためる編集後記。

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私も、アートが遠いと思っていた一人です

アーティゾン美術館で開催中のブランクーシ展にはもう行かれましたか。どの作品もかっこよかったですね。本筋とは逸れますが、大ぶりのニットをゆったりと着こなすブランクーシ本人のファッションセンスにも、私はぐっときてしまいました。

そういう色んな発見があるので美術展に行くのは好きで、展示を見た後に、図録がどんな作りなのかを見るのも好きです。ミュージアムショップで気の利いたグッズがあるのか探すのも大好きです。ここまでは、みなさんにもだいたい同意いただけるところかと思います。

ところが、アートを買う、という話になると急に血圧が下がってしまうのがこれまでの私でした。アートは買えるようなものではないと、どこかで思ってしまっている。バンクシーの作品がロンドンのオークションで数億円で落札されたというニュースを見るとさらに、さらに。

しかし、世の中を見渡せば、小さなアートを部屋に取り入れて素敵に暮らしている人たちがたくさんいます。彼らは、意外とアートが気軽に買えることを知っているのです。調べてみると、数万円、ともすると数千円で買える作品もあるではないですか。

買う方のアートが遠い、怖いと思っていたのは、アートがどこで、いくらで買えるかを知らなかっただからなのかも知れないと思えました。だから今回は思い切り、このアートはどんなプロセスと思いで創作されたものか、どこで買えるアートなのか、そして、大声で尋ねるのは気恥ずかしいですが、おいくらなのか、ということを明確に掲載する特集にしようと決めました。

本特集をお読みいただけると、きっと、これまで以上にアートというものに親近感を持てるようになるはずです。また、特集の中で登場するアートには、必ずアーティスト紹介も付いています。知れば知るほど、インテリアや洋服と同じ気持ちでアートを見られるようになりますよ。

グループ展「Not Quite」の展示
特集でも取材をさせてもらった日本橋馬喰町のアートギャラリー〈PARCEL〉では今、デザインをテーマにしたグループ展「Not Quite」を開催中。デザインはアートか、アートじゃないか、という枠組みを取り払った時、純粋にそのものの形や美しさを知ることができるという考えのもと、企画されたと教えてもらいました。このコンセプトをお聞きして、霞が晴れる思いで特集に引き続き取り組めるようになりました。

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