ジャズは人だなあ
横浜の野毛、酔郷の真っ只中に、そのジャズ喫茶はある。入り口を入り、左に行けば、ボックス席が並び、右に行くと、カウンター席がある。ボックス席に座れば、Altec A-7から溢れる音を存分に浴びることができるし、カウンターに座れば、店主と話をしながらとびきり美味いコーヒーを飲むことができる。
僕はいつもカウンター席に吸い寄せられてしまう。店主と話せば、最近見つけたマニアックなレコードから、行こうと思っているライブ、横浜の美味い店、さらには最近の京都情報まで(なにせその店主は京都に目がない)なんでも教えてくれる。何なら店主と話すために行っているみたいなところがある。
今回、その店には4つのお題でレコードを選んでもらい、寄稿してもらった。僕らが話を聞いて書いてしまうよりも、そのままお店の個性を感じてもらうほうが、より強力なリコメンドになってくれると思った。他にも全国の14店舗に協力してもらったが、基本的には店主の寄稿がほとんど。
昔のジャズ雑誌にジャズ喫茶店主の寄稿というのはつきものだった。村上春樹さんもジャズ喫茶店主の時によく寄稿している。文章からは、店主が丁寧なのか、陽気なのか、曲者なのか、一文読んでわかったりするから面白い(実際は真逆かも知れないのも面白い)。そして、毎日何十人、何百人の人間を観察し、選曲する彼らの選ぶ盤と紡ぐ言葉にはすごく説得力がある。
今回の特集では、そんな人物をもう一人見つけてしまった。高田馬場のイントロの店主・茂串さん。とびきり饒舌で、ジャズを愛し、プラスのオーラが満ち満ちている。そのおかげか、50年近く営業を続けているイントロは今や世界中から訪れるお客さんでごった返している。是非行ってみてほしい。