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妄想小説「香りは記憶」 Vol.6 〈D’ORSAY〉のNous sommes amants. M.D.

新作香水を僅か10行ほどの妄想小説で表現し、お届けします。スタイリスト・梶雄太が物語るのは、リリースでは表現しきれない、香りの記憶。実際にその香りからインスパイアされた恋愛ドラマは、不思議な余韻を残します。甘酸っぱい恋もあれば、爽やかな別れも。あなたはどの香りを選びますか?

illustration: Kazue Kuranaga / text: Yuta Kaji

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『理不尽な合理性』

文・梶 雄太

長らく一緒にいるパートナーとは住み始めて3年が経つ。
グラフィックデザインを生業にしている
彼の行動パターンも熟知していると思っていた。
朝8時に起き、毎日変わらない朝食を食べる。
9時から10時までウォーキングをした後に車で事務所へ向かう。
余程の繁忙期でない限り20時にはいつも自宅へ戻ってくる。
彼は生活のリズムを、仕事同様にきっちりと整理し、
デザインしたいようだ。
きっかけは1枚の領収書からだった。
聞き慣れない街のなんてことのない駐車場の領収書を
彼の車で見つけた。
それから数カ月で10枚ほど。
嫌な予感がしたので問いただしてみると、
彼はあっさりと不倫を認めた。
シンプルでわかりやすく整理されていると思っていた
彼のデザインは、その奥でとても複雑に入り組んでいたのだった。

クリードの香水アバントゥース

テーラーと英国王室の関係から始まる意外な歴史。世界が熱狂する〈クリード〉の香水「アバントゥス」

整える / PR

アルフレッド・ドルセー伯爵が1830年にフレグランスを世に送り出した。芸術的センスに溢れる彼は、当時男女別々の香水を使うことが主流であった時代、禁断の恋の相手であるマルグリットと、常にお互いを近くに感じるため、二人のためのラベルの無い香水を作った。そのストーリーに目をつけたアメリー・フインは、2015年に「愛」「官能」「言葉」をテーマに、〈D’ORSAY〉に新たな息吹をもたらした。以来、数々の情熱的な香りを世に送り出している。ボディフレグランスの他に、ルームフレグランスも充実。

〈D’ORSAY〉Nous sommes amants. M.D.

〈D’ORSAY〉のM.D. Nous sommes amants

「恋人同士」の名を冠したM.Dは、メゾンを代表するベストセラーの一つ。ウッディでスパイシーな香りを構成するのは、ブラックペッパー、シダー、サンダルウッドなどのブレンド。この香りを纏った途端、どんな間柄の2人も恋人同士になってしまう。そんな動物的かつ官能的なコンセプトこそ、〈D’ORSAY〉の真骨頂と言える。

ドルセー 恋人同士 M.D.

29,700円(90ml)

ドルセー 青山本店

TEL:03-6804-6017
HP:https://dorsay.jp/

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