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森林を救え!付加価値を生み出すユニークな取り組み

森林資源の有効活用のあり方はいろいろだ。多くの端材を活かすことも、ユニークな商品を生み出すことも必要な活動だ。なぜなら、一人でも多くの人が、少しでも自然に目を向けるキッカケとなれば、それだけで最高に素敵なことだから。その試みの一部を紹介しよう。

ザハ・ハディド・デザインと
老舗家具メーカーが森を救う

80年以上の歴史を持つ老舗家具メーカーカリモク家具は、材料の調達から、製造や販売までを自社で担う数少ないメーカーのひとつ。いま、真剣に取り組むのは、優れた技術で集成材に新たな高付加価値を生み出すモノ作りだ。

一般的に木材を伐採したら、まっすぐで太い部分のみを使い、4分の3はいわば端材として処理されることが多い。また、ナラやカエデ、クリなどの広葉樹も、紙パルプの原料となるチップにされることが多く、家具として活用することは、実は少ないという。それらを集成材にして、美しい家具を作るというもの。

資源を余すところなく形にする、
集成材を使ったデザイン家具

その真骨頂とも言えるのが、Karimoku New Standardや石巻工房 by Karimoku、MASと呼ばれるプロジェクト。これまで国内外の多くのデザイナーと協業し、美しい家具を生み出してきた。そして、これまで培ってきたノウハウの集大成として、新たなプロジェクトが始動した。

それは、ザハ・ハディド・デザインとの協業から生まれた『セイユン』コレクションだ。中でも『セイユン チェア』は木で作られたとは思えない美しいフォルムを描く。緻密な構造設計によりアシンメトリーな3つのピースをジョイントでつなぎ、人間工学に基づいた美しい曲線と究極の座り心地を生み出した。メタリックなのに木目を感じさせる塗装など、木製家具のイメージを覆す仕上がりだ。

専門知識と技術を持つ作り手と、世界レベルのデザイン事務所が協業した今回の試み。日本の林業が抱える課題を解決しながら、木の家具を高い次元に押し上げるという、ユニークでイノベーティブなコラボレーションとなった。

森のエキスをドリンクに。
“飲んで森林浴”の新体験

非常にユニークなアプローチをしているのが、木の食用化を日々研究するブランド〈木(食)人〉から登場した、香木を蒸留した新感覚飲料「FOREST SODA」。

これを発売している日本草木研究所は「全国の里山に眠る可食植生の食材としての可能性を探る」という原点回帰かつ未来を見据えた研究機関。そして共同開発であるTŌGEは、軽井沢の離山を舞台に「自然・人工物・人をとりまく日々の暮らしを見つめ直すアート・プロジェクト」を推進する実験場だ。

FOREST SODAは長野県軽井沢町の離山に自生するモミ、アカマツ、カラマツ、アブラチャン、ヒノキなどの香木を蒸留して作ったノンアルコール微炭酸飲料。

口に含むと爽やかな炭酸の刺激とともに、フワッと木々の香りが広がる。家に居ながらにして、まさに森林浴をしている気持ちになる。木に含まれるフィトンチッドという香り成分が精神安定効果も期待できるそう。

軽井沢 木(食)人 FOREST SODA ¥2560(日本草木研究所)

山男がガチャを作った。
しかも賞を取ったって

1回¥500。『山男のガチャ』の売り上げは、東京の森づくりに活かされる。

東京都下にも林業を営む会社がある。檜原村の東京チェンソーズ。社長以下、若い社員が新しい林業の未来を模索している。

流通に乗らない規格外の木や、活用されない部材をいかに有効利用するかという課題解決の一環で作ったおもちゃが、ガチャという形で商品化され、それがJAPAN WOOD DESIGN AWARD2021の林野庁長官賞を受賞したという。

そもそも、東京チェンソーズは“林業を身近に感じてほしい”という思いで立ち上げ、木を自分たちで伐り出し、加工して、エンドユーザーまで届けるという試みに挑戦し続けている。

木を1本、丸々売るという発想から生まれた

ユニークなのは、木の「1本まるごと販売」だ。通常の流通では、山に生えている状態から、根っこや枝葉を除いた50%が原木として市場に並ぶ。そこから製材所に持ち込まれて加工され、50%程度しか残らないというから、都合25%しか活用されていないのだ。

そこで、なんとか有効活用しようと知恵を絞る中で、「山男のガチャ」は誕生した。本来は捨てていた端材の個性を活かし、おもちゃ、マグネット、バードコールなどに生まれ変わらせたというわけだ。

全体量からすると、微々たる端材かもしれないが、森林を最大限活用したいという彼らの思いは形になり、人々に伝わり、次世代へと受け継がれていくはずだ。このガチャは、多摩エリアをはじめとする30か所に設置され、売り上げは東京の森へと還元されるという。