店を見守ってきた食品サンプルたち
開店当初はピカピカで物珍しくて人気者だったのに、時間の経過とともにショーケースの中で日焼けし、埃を被って古ぼけてしまい、店主ですら気に留めることがなくなってしまった、食品サンプルたち。
店の顔なのにこの扱いはどうして？と思ったんですよね。でも、食品サンプルからは「ずっとご主人様を見守ってきましたよ」「あとちょっと、お互いに頑張りましょうね」という健気な声が聞こえてくるような気がして、近い将来、消えてしまうだろうこの景色を残さなければというミッションを勝手に背負うようになりました。
記録と同時に、記憶を切り撮る
東京の東側エリアなど、昭和の薫りが残っている下町に行くと、まだまだたくさん見つけることができます。最初は、食品サンプルそのものを、寄りで撮影していたんですが、そのうちにメニューの札とか、お皿まわりのディスプレイも楽しむようになりました。
時には撮り歩く自分自身がショーケースに写り込む姿を記録するときもあります。ホットケーキが評判の店のサンプルが、残念な状態のときもありましたね。でも、実際に食べたらやっぱりおいしかった。そういうことも場所の記憶として残っていくんですよね。
食品サンプルきたなシュランgallery
【オムライス】
完全に脱色する前を記録した貴重な一枚。餃子ときどき卵、みたいな色合い。三ノ輪。 
卵白だけを使ったのでしょうか。ソースがまるでカラメルソースのようです。熱海。 
出来立ては気泡も精密に表現した傑作だったと思われる。毛穴詰まりのようで残念。祐天寺。
【カレーライス】
化石化してしまったカレーライス。具入りの固形ルーが少しめくれ上がっていて恐怖。浅草。 
大前提として選ぶべきはこのお皿ではない。カレーの表面張力と、おこげご飯の塊感。新宿。 
パッと見、お皿を放棄してしまったのかと思わせる爆盛り。これで出されても困ります。立石。
【スパゲッティ】
これを焼きそばと呼ばずになんと呼ぼうか。決してナポリンタンではないと断言したい。所沢。 
遭遇率高めの“スパゲッティの焦げ感”が必要なのかは大いに議論する余地がありそうだ。浅草。 
取り分ける際のリフト感を余すところなく表現。ショーケース内はまさにカオス！熱海。 
エノキスパゲッティですか？ これはサンプル以前の問題。盛り付けの大胆さを見習うべし。大阪。
【デザート】
withミルクはホイップのことでしょうか？ 缶詰みかんのデコレーションが泣かせる。大阪。 
ひな祭りに食べたいパフェには、豚バラ肉がのっている模様。いや、フレークですね。熱海。 
注目すべきは珍しいさくらんぼ。そしてレスカ（＝レモンスカッシュのこと）でしょう。高崎。
【パン】
クラブハウスサンドはラスクに挟んで提供しているようです。奥がハッキリ見えなくてよかった。大阪。 
菌が繁殖していく過程を見せつけられているよう。喫茶店ならもう少し厚切りパンが好みです。都立大学。
【パン②】
フランスパンでエントリーですが、すべてが気になる。ベーコンにマスタードのような縁取り。都立大学。 
もはやエッグは火山灰に埋もれてしまったようです。肉だけが焼き立てジューシーをkeep。都立大学。
【ハンバーグ】
ソースが大事件です。果たしてここに至るまで何食分のオーダーが入ったのか、想像したい。三ノ輪。 
ハンバーグを作ろうと思ったんだけど、気が変わったのでパン粉をまぶして別メニューに？阿佐ヶ谷。 
グレイビー風のソース。ハンバーグが2つに割れそうです。「ラィス」が泣かせる650円。高崎。 
こちらは添え物が気になってしまいます。しらがねぎ風のものはおそらくキャベツの千切りかと。祐天寺。
【一品】
鶏肉の皮や断面に凝りすぎて、おかしなことになったのかもしれません。素揚げみたいですね。三ノ輪。 
ジャンボサイズの海老を焼いたんでしょうか。こんな盛り付けで提供する店があるんですね。立石。 
たらこは着色途中。メニューは領域を守ったけれど、隣の皿からマグロ片がこんにちは。浅草。 
皿がお通しサイズだからか、隠れてしまいます。「肉」の字はオリジナル、「ガ」はカタカナ。浅草。
【寿司と丼】
独特な丼です。白身は真鯛でしょうか。海苔はご飯とネタの間だけではなく、上からも溢れんばかり。平井。 
わっぱ飯のような食べ物こそ説明が必要なわけで、内容はきちんとわかりますね。内容物は……。所沢。 
お米が入る空間を見せてしまったがために、焼肉が非常に不思議な食べ物に見えてしまう。浅草。 
酢飯は赤酢ですか？ 手前の第1列は「自慢の手巻き」とはいえだいぶ斬新。大将どや顔。中野。
【麺】
麺ものあるあるは、丼の中で踊り出す現象。おかげで天津メンは几帳面に焼いたお好み焼きのよう。熱海。 
ディスプレイで気分は盛り上がっているけれども、上海焼きそばは、炒めすぎてもはや焦げレベル。早稲田。 
ジャージャーメンを平皿に入れた上に、傾けてしまうという。不安を煽る挑戦的なサンプル事例。四谷。 
昔懐かしい出前のように、ラップをかけたサンプルが多いのが中華。でも中身だけラップはレア。西小山。
【野菜】
ガラス皿に生野菜。とてもみずみずしい組み合わせなのに、哀愁が漂ってしまうのはなぜ？所沢。 
事情があるのかもしれないけど、お皿だけでもちゃんと用意してほしかった。仕上げはマヨネーズ？浅草。 
こちら、カニサラダです。少なく見積もっても8品目は入った豪華なサラダなんですね。¥600。高崎。 
マヨネーズを絞り出したときの筋も埃に弱かった。家でもこんなかけ方はしませんよね。祐天寺。
